ツナ父奮闘記
ツナ父奮闘記
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しゅるり、と布の擦れる音が、静かな保健室に響きます。
制服のリボンが落ち、獄寺くんの腿に掛かりました。
ボタンを一つずつゆっくりと外していきます。そして―――
獄寺くんの、まるでその純情さをそのまま移したかのような淡く白い下着と肌が現れました。
少し寒いのか、獄寺くんは身を縮めています。
そして流石に恥ずかしいのか、少し上気した顔をシャマル先生に向けました。
「シャマル……」
こんな状況で理性を抑えきれる人間が、果たしているでしょうか?いいえいません。(反語)
シャマル先生は獄寺くんを押し倒してしまいました。
「シャマル…?」
獄寺くんは不安そうな顔をシャマル先生に向けます。
シャマル先生は獄寺くんにゆっくりと顔を近付けていって、そして―――
「たのもーっ!!!」
声が聞こえました。ただの声ではありません。大声です。
続いて、何かが壊れる音が聞こえました。恐らくは保健室のドアです。
「無事か獄寺!!」
ベッドの前までやってきたのはボクシング部の笹川了平先輩です。
彼は獄寺くんが危ないことをツナと雲雀先輩に聞いて野生の勘で保健室まで辿り着いたのです。すごいですね。
了平先輩は上着を脱いだ姿で押し倒されている獄寺くんを見て、シャマル先生を睨みつけました。
「貴様……婦女子になんたる暴行を!獄寺から離れろ!!」
「け……っいやだって言ったらどうす…」
ドゴォッ
「もちろん…排除するよ。力ずくでね」
シャマル先生が台詞を言い終わらないうちに吹っ飛びました。
吹っ飛ばしたのはもちろん雲雀先輩です。攻撃のあとに台詞が出てくるあたり、相当切れています。
続いてツナも現れました。
「獄寺くんっ!いる!?」
「10代目!!」
獄寺くんは愛しのお父さんの声を聞いて、嬉しさのあまり起き上がりました。
「よかったっ無事だったんだねごくで……うわぁぁあぁあっ!?」
獄寺くんの声を聞いて、ツナはまっしぐらに獄寺くんの所へとやってきましたが、獄寺くんのあられもない姿を見て絶叫してしまいました。
「ちょ……っ獄寺くん服!服着てっ!!」
「あ、はい」
獄寺くんはツナの言うことは素直に聞きます。
いそいそと服を着始めました。
「ああ…獄寺くん、ごめんね、危ない目に遭わせて。もうオレから離れちゃだめだよっ!?」
服を着ていつも通りになった獄寺くんをツナは抱きしめました。
「10代目……ご心配かけて、申し訳ありませんでした」
感動的なシーンです。そしてその向こうでは、未だにシャマル先生は雲雀先輩と了平先輩にしばき倒されているのでした。
ガラッ
教室のドアが開きます。先生と生徒がこちらを見ました。
「お、ようやく来たか。本来なら遅刻扱いなんだが、まぁ大目に見てやろう」
朗らかな声でそう言ってきたのは担任のディーノ先生です。
あだ名は跳ね馬です。2年A組跳ね馬先生!!どこぞの炭酸飲料水のCMに抜擢されてもおかしくありません。
とてもいい先生なのですがやっぱり獄寺くんを狙っています。でもどちらかというと守ってくれているのでやっぱりいい先生です。
「大変だな毎日。大丈夫だったか?」
とりあえず、武くんはちゃんと言ってくれたようです。
「すみません、ディーノ先生」
「いいって。あとで報告を入れろよ」
受け答えをしながら二人は自分の席に着きます。隣同士です。
いつものようにみんなの視線は獄寺くんに注がれています。いくつか嫉妬の視線もツナに注がれていますが。
でもいつものことなのでツナは気にしません。獄寺くんは最初から気付いていません。流石です。
そんないつも通りの授業も滞りなく流れていきました。
視線のことを気にしなければ獄寺くんと隣同士で誰かに奪われる心配もありません。
ツナ安心の一時です。
でもその一時もすぐ終わってしましました。とりあえず報告をと、二人はディーノ先生と生徒指導室へと赴きました。
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