ツナ父奮闘記
ツナ父奮闘記
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「んで?今日は何があったんだ?」
ディーノ先生が優しく聞いてきます。ツナがなんと言うか迷っていると、獄寺くんが先に口を開きました。
「山本に挨拶されて、ふらついたら雲雀に心配されて、シャマルに介抱されて遅くなりました」
獄寺くん………っ
ツナは涙が出るのを何とか堪えました。ああ、この子はなんて天然なのでしょうっ!!
「………そうか」
ディーノ先生は獄寺くんと会話をしながらツナの手に何かを渡しました。机の下からなので獄寺くんには分かりません。
それはペンと紙で、紙にはこう書いてありました。
"本当は?"
ツナは獄寺くんに気付かれないよう事実を書きました。
"山本が獄寺くんに熱烈タックルをかまして獄寺くんが吹っ飛び"
"気を失った獄寺くんを雲雀先輩が応接間へと連れ込もうとし"
"シャマルが獄寺くんを奪って保健室で服を脱がせていたのを助け出すのに時間が掛かって遅れました"
ツナが紙とペンをディーノ先生に返します。
一呼吸後、ディーノ先生は吹き出し、むせてしまいました。
「は、跳ね馬っ!?」
獄寺くんにとっては話していた先生がいきなりむせてしまったと同義です。驚きます。
「獄寺……お前もう少し危機感と言うものを…いや、むしろ今のままの方が……?」
ディーノ先生葛藤中。若いですね。
「………ま、まぁいい。獄寺。絶対ツナと離れるなよ」
ディーノ先生は最後にそう言って、二人を解放しました。
二人は教室に帰ってきました。時間はお昼。お弁当の時間です。
「あ。ツナくん、獄寺くん」
教室には既に女の子グループが二人を待っていました。
女の子グループは笹川京子ちゃんと黒川花ちゃんと三浦ハルちゃんです。みんな思い思いにお弁当を広げています。
京子ちゃんはこの学年のアイドルです。とても可愛い女の子です。
花ちゃんは京子ちゃんの親友です。クールです。
ハルちゃんは別のクラスの女の子です。京子ちゃんと仲良いです。
「今日は早かったじゃん」
「うん、誰が手を出したか、はっきりしてたからね」
獄寺くんに手を出した生徒には、ちょっと口では言えないような制裁が加えられます。
たいていの生徒は一度の制裁で懲りるのですが、中には懲りない生徒もいます。朝のみんながそれに当たります。
ちなみに了平先輩は、獄寺くんを狙っていますが手を出しているわけでないので制裁は行われていません。珍しい例です。
「はい、お二人のお弁当ですよ!!」
ハルちゃんが可愛らしいハンカチに包まれたお弁当箱を取り出します。
料理の出来ないツナと獄寺くんのために作ってきてくれたのです。
最初はコンビニのお弁当やパンを食べていたのですが、ハルちゃんに「不健康です!!」と言われたのがきっかけです。
「いつもすまねぇな」
「いいんですよー」
女の子に囲まれながらお弁当をつつく。
傍から見ると、まるでギャルゲーのようなシチュエーションです。
実際、ハルちゃんはツナのことが好きですし、京子ちゃんも満更ではない模様です。
ただ、ツナは獄寺くんが可愛くて仕方がないのでその気はあまりないようです。
「それにしても相変わらず獄寺はすごい人気ね」
「そりゃあオレの娘だからね」
「はいはい…」
親馬鹿です。惚気かもしれません。
「でも本当、ものすごくモテますよねーっ」
ハルちゃんも話題に便乗してきました。
「なんでか全然分からないけどな……」
困ったように笑いながら獄寺くんは答えます。はにかみながらお弁当を突くその姿は誰をも魅了します。
もちろん、女の子だからといって例外ではありません。
隣で獄寺くんが小動物のようにお弁当をつついているのを見ていた京子ちゃんは、モロに魅了されてしまいました。
「ご…獄寺くん可愛いーっ」
思わず獄寺くんを抱きしめる京子ちゃん。
物凄い光景です。アイドルがアイドルを抱きしめています。
携帯のシャッター音が鳴り響きます。きっと午後の授業が始まる頃にはすべて没収されているでしょう。
ツナがシャッター音に少し鬱陶しさを感じ始めたときでしょうか?なにやら廊下を走ってくる音が聞こえてきました。
その音は教室の前で止まりました。もちろん、今ツナたちがいる教室の前です。
ばーんと大きな音を立ててドアが開かれました。
「獄寺氏ーっ!!」
現れたのは伊達な牛男です。名はランボ。獄寺くんを狙っています。かなりウザイです。でも何故かいつも五分間しかいません。不思議です。
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