がんばれ☆ツナ父
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「ああ…隼人くん。今日も美しい。愛らしい。いい香りがする」


骸がオレの髪に顔をうずめる。

と、後ろから手が伸びてきて骸の肩をとんとんと叩く。10代目だった。10代目は笑顔で、


「ご・く・で・ら・く・んから手を離さんかいボケーーー!!!」


と言って骸を思いっきりぶん殴った。

しかし骸はオレを離さず、結果オレも一緒に吹っ飛んだ。


「ご、獄寺くん!!」

「クフフ。大丈夫ですか?隼人くん」

「いってー…」


起き上がろうとするが、骸が手を離してくれない。


「…おい。離せ」

「クフフ。嫌です」


面倒くせぇ…

と、後ろから強い力でひっぺがされた。

10代目だった。

10代目に抱きしめられる。


「これはこれは。お父義さん」

「誰がお父義さんだ!!」

「娘さんをお借りしてもいいですか?放課後デートしたいんです」

「絶対に許さん!!」

「じゃあ一緒に帰りましょう。送りますよ」

「駄目!!」

「クフフ。取り付く島もありませんねぇ」

「行こ!獄寺くん!!」

「あ、はい!」


オレは10代目に引っ張られてその場を後にした。



立ち止まる機会を失ったのか、オレたちはずっと走り通しだった。立ち止まったのは下駄箱で靴を履き変えた時ぐらいだ。

急いで坂道を駆け上がる。走って。手を繋いで。

結局自宅玄関まで全力疾走していた。玄関で息切れを起こし、手を床につく。


「ん?帰ってきたのか」


エプロン姿のリボーンさんが出迎えてくれた。


「た、ただいま帰りました…リボーンさん」

「そんなに急いでどうしたんだ?誰かに追われたのか?」

「いやぁ…今日も今日とて変態共に追われてさー…大変だったわ」


そうだったのか。


「まぁ、いい。手を洗ってうがいしてこい。おやつを準備しよう」

「今日のおやつはなんですか?」

「ミルクレープだ」


おやつは毎日リボーンさんの手作りだ。とても美味い。

オレは走ってきた疲れも吹き飛んでうきうきと洗面台に向かった。

テーブルの上には既におやつのミルクレープと紅茶が用意されていた。


「いただきます」


フォークで一口大に分け、口に入れる。


「んんーーー」


おいしい。

思わず感嘆の声が出る。

幸せだ。


「………」


と、視線を感じ、見れば10代目とリボーンさんがオレを見ていた。にこにこと笑いながら。


「どうしたんですか?」

「なんでもないよ」

「なんでもねーぞ」


そう言って二人も食べだした。


「?」


オレにはよく分からなかった。


「さて、じゃあオレは飯でも作るかな。今日はハンバーグだぞ」

「あ!オレも手伝います!!」

「え…?」

「む…」


二人が同時に固まった。どうしたのだろう。


「いや…獄寺。気持ちは嬉しいが…」

「オレ…いつもリボーンさんに家事を押し付けてばかりじゃないですか。だからオレ…リボーンさんのお役に立ちたいんです!!」

「………獄寺…」


暫し見つめ合う、オレとリボーンさん。


「……わかっ…」

「獄寺くん!!」


リボーンさんが何か言いかけ、それを遮るように10代目が声を張り上げる。


「はい。なんでしょうか10代目」

「べ、勉強教えて!!」

「勉強…ですか」

「そう!宿題も出たし!獄寺くんに見てもらいたいんだよ!!」

「そういうことなら…分かりました!!」


オレは準備をすべく後ろに置いてある鞄に手をかけた。

後ろで「己を見失うなリボーン!!」という声が聞こえたような気がした。


「どうかしましたか?」

「なんでもない!!」


リボーンさんは食器を持って台所へ向かっていた。


「じゃあ、勉強しましょうか」

「ああ、うん。よろしく。獄寺くん」

「はい!」


10代目の隣に座る。ノートを広げる。


「まずは宿題から片付けちまいましょうか」

「………」

「?10代目?」


見れば、10代目はノートではなく何故かオレの方を見ていた。