誤解の行く先
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「うーっすシャマルー。いるかー?」
続いて標的に選ばれたのはシャマルである。
女性しか診ないと豪語し、そして女性が来ればセクハラの数々を仕掛ける医師のいる所に来るような生徒はおらず、保健室は今日も閑散としていた。
「お…隼人じゃねーか。どうしたんだ?」
「これをやろうと思ってな」
言って獄寺が取り出したるは先ほど雲雀に渡した物より大きな包み。雲雀と別れたあと向かった教室。自分の机の上にどーんと鎮座されていたものだ。
これを持って帰るのは面倒い。という理由で獄寺はシャマルに押し付けることにした。
「な…んだ?どうしたどうした?お前からいきなり急にプレゼントだなんて」
「贈り物をするのに理由なんているのかよ」
おろおろし、微妙に慌てふためくシャマルと対照的にいつも通りの獄寺。
むしろシャマルへの意識は外し、既に獄寺の思考は次は誰にあのプレゼントの数々を押し付けようか考えているところである。
「り…理由って、普通あるだろ。その、なんだ、す、好きだからとか」
「あー?…じゃあ、あれだ。いつも世話になっているからとか、実は感謝しているからとか、そういう奴で」
言って、しまったからかうネタを提供してしまった。と思い獄寺は慌てて踵を返す。
「じゃーな」
「あ、おい―――」
シャマルの言葉も虚しく、獄寺は保健室を出て扉を閉める。保健室にはシャマルだけが残される。
暫しの無言の後、シャマルは渡されたプレゼントを見て…獄寺の言葉を思い出して…年甲斐にもなく胸をときめかせた。
いつも世話になっている。実は感謝している。なんて。なんて可愛らしい。愛らしい。
あからさまに取ってつけたように聞こえる理由だったが、それはもちろん照れ隠しだろう。
でなければこんなプレゼントをくれるわけがない。他に理由など考えられない。
もちろん獄寺本人からしてみれば取ってつけた理由で貰ったプレゼントを押し付けただけなのだが、シャマルはそのことに気付かない。
時間が経って、放課後。
下校時には更に積み重なっていた贈り物の数々を見ないふりをしながら獄寺は帰路に付く。
その途中。
「よお。今日はひとりか?」
「跳ね馬か」
声を掛けられた。ツナの兄弟子でリボーンの教え子のひとりである跳ね馬のディーノ。
これ幸いとばかりに獄寺は鞄の中からまたひとつのプレゼントを取り出した。
「丁度良かった。これをやろう」
「な…なに!?スモーキンからオレにプレゼントだと!?」
ディーノは驚いた。
あの…あの獄寺が。自分には年上という理由だけで敵視している獄寺が自分に贈り物。
「えーっと…いつも世話に…なってねえな。実は感謝…してねえな。あー…理由なんてなんでもいいだろ」
獄寺はもう結構適当になってきていた。
「あ…ありがとう!ありがとうスモーキン!!」
でもディーノは特に疑問は持たなかった。本気で獄寺に感謝していた。
「大事にする!本当に本当にありがとうな!!」
「お…おう」
獄寺も若干引いていた。
それから獄寺は公園に行ってはプレゼントの中にあった菓子をちぎっては鳩や猫にやり。
偶然会ったランボやイーピンに菓子をやって家に帰った。
後日、勘違いした野郎共からお返しの菓子が届けられ、更にはデートも申し込まれるのはまた別の話。
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おい菓子がいらないから押し付けたら菓子を貰ったぞ。
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