獄寺くんがクラスの女子に合コンに誘われたみたいです
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某月某日。

クラスの女子が、獄寺に話しかけてきた。


「ねえねえ獄寺くん!」

「なんだよ」

「今日みんなで合コンやらない!?」

「断る」


女子は三秒で断られた。



「獄寺くん、何か用事でもあるの?」


と、再度獄寺に声を掛けてきたのは笹川京子。ちなみに先程獄寺に話し掛けた女子は机に伏している。

それを目の端に写しながら獄寺は京子を一瞥して、


「いや…特に予定はねえ」


と答える。すると京子は苦笑して、


「なら、参加してくれないかな?みんな獄寺くんともっと交流を深めたいって思ってるんだ」

「はあ?」


獄寺は間抜けな声を上げる。京子の言うことが信じられない。

獄寺は転校してきてからクラスの人間には冷たくあしらってきた。ツナには懐いているが、それぐらいだ。

あとは山本が獄寺にしょっちゅう話しかけては邪険に扱われている。女子も同様だ。

なのに、そんな自分と交流を深めたい?何故?理由が分からない。


「だってみんな、獄寺くんがいい人だって知ってるもの」

「はああ?」


獄寺は更に間抜けな声を上げる。いい人って、どこからそんな情報が出てきたんだ。


「え?だって北川くんは不良から助けてもらったって言ってたし、宮本くんは具合が悪いとき手を貸してくれた言ってたし、あかねちゃんはプリント運ぶの手伝ってくれたって言ってたよ?」

「あー…」


確かにそういう記憶はある。名前と顔は知らないが誰かを泣かせている不良を蹴飛ばしたり、廊下でへたり込んでいる奴を保健室まで放り込んだこともある。プリントは…まあ、気分だ。

けど、その程度でいい人認定されるのは違和感しかない。自分はいい人などではない。断じて。決して。


「ありゃ気紛れだ」

「獄寺くんって毎日気紛れ起こしてるの?」

「………」


そういうわけではない。そういうわけではないが…京子の口調は獄寺がよくそういう行動を取っていることを知ってる様子だ。

ここで下手なことを言えば獄寺が覚えてもいない過去の出来事を話される気がする。


「…どうでもいいだろ」

「あっ」


やや乱暴に立ち上がり、教室を出ようとする。

廊下を歩きながら、ふと獄寺は回想した。それはまだ日本に来たばかりの頃。転校して間もないとき。

敬愛する10代目事ツナに自分だけでなくもっと周りと溶け込んだらとアドバイスをもらっていた。

あの頃はまだ視野が狭く、ツナのことしか目に入っていなかったが…今はもう余裕も出来た。周りも見れる。

ちなみに、その当時のツナの本音は自分に執着してくる獄寺が恐ろしく自分から引き剥がそうとしただけだった。それは無駄に終わったが。

なお、今ではむしろツナの方が獄寺に異様なまでの執着を見せている。時間の経過は恐ろしい。

もし仮に獄寺がこの合コンのことをツナに相談すれば「駄目!絶対駄目!!」と有無を言わせず断らせただろうが…今ツナは教室にいない。

ともあれ獄寺は過去のツナの進言もあり少しだけ合コンに興味を持った。

だが、獄寺にはひとつ分からないことがあった。それを聞こうと…ついでに頷いてやろうと京子に顔を向ける。


「笹川」

「なに?」

「合コンの件、考えてといてやる」

「本当っ!?ありがとー!!」


花が咲くような笑顔を見せる京子。そんな京子に、獄寺は質問する。


「で、合コンって、なんだ?」


何故か教室中の人間がすっ転んだ。



廊下を歩きながら先ほど説明された合コンについて考える。

京子曰く、


「合コンっていうのはみんなで集まってお喋りして仲良くなるイベントのことだよー。つまり交流会、親睦会だね!」


とのことだ。


「交流会…ねえ」


もとより獄寺はボンゴレより送り込まれ任務で学生のふりをしているだけだ。何かあれば学業など二の次で与えられた任務に行かなければならない。

もしボンゴレが一言「戻ってこい」と言ったならば、次の日には獄寺はもう日本にはいないだろう。

とはいえ、ツナのことを考えればその可能性は低いのだが。

まあそれは置いといて、今は合コンだ。

集まって話す…自分に一体何を話せというのだろうか。話せることなど何もない。ダイナマイトの手入れの方法でも話すか?

やはり自分などが行ってもつまらないだろう。ここは辞退するが手か…

などと思っていると、


「何難しい面して考え込んでるんだ?」


という声が聞こえ、影が差した。