獄寺くんがクラスの女子に合コンに誘われたみたいです
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見上げれば白衣の男。獄寺のよく知る人間、シャマルがいた。


「なんだシャマルか」

「なんだとは何だ」


朗らかに笑われる。少しむっとしながらも、獄寺はシャマルに合コンについて聞いてみることにした。


「おいシャマル」

「ん?」

「クラスの奴に合コンに誘われてるんだけどよ」

「ご、合コン!?」

「ああ、で、合コンってのはどんなこと話せば…」


獄寺が話す途中、シャマルが突然強い力で獄寺の両肩を掴む。驚き見上げると真面目な表情のシャマルがいて、


「合コンなんて物騒なところ、行っちゃいけません!!」


口調が。


って、物騒?


「?なんだ?合コンって危険なのか?」

「危険なんてもんじゃねえ…下手すればそいつの人生が狂うほどのイベントだ…」

「く、狂う!?」


ば、馬鹿な。合コンとはそんな怖いイベントだというのか。


「お、おいおい冗談はよせよ…聞いてみたら合コンってのは集まって話すだけの交流会って聞いたぜ…?」

「ふ…相変わらず馬鹿だな。いいか?集まって話すだけならどこでだって出来る。クラスの奴に誘われたと言ったな。なら教室でだって出来る。なのにわざわざ呼び出すということは…分かるな?」

「………」


ごくり、と獄寺は唾を飲み込む。

わざわざ自分の知らぬ場所へと呼び出す。そこには不特定多数が待ち構えて。扉を開けると向けられる銃口。放たれる弾丸。身体に衝撃、飛び散る血飛沫……


「うおおおおおおおっ!!合コンこえーーー!!!


「だろ?合コンは恐ろしい…だから行っちゃならん…」

「………」

「だが…それでもあえてお前が行くというのなら、オレは止めん…しかしひとつだけ忠告しよう」

「…なんだ?」

「"オウサマゲーム"だけは絶対にするな」

「お…オウサマゲーム…?」

「ああ…ある特定の条件で決められたひとりの人間の命令を必ず聞かなければならない。…いいか?必ずだ。絶対服従なんだ。…分かるな?」

「………」


己は命令だけして手を汚さず、部下に全ての汚れ役を押し付けるってわけか…と獄寺は盛大な勘違いをする。

殺せと命令し、死体を片付けろと命令し、バレても身代わりを命令し、攻撃されても楯になれと命令する…命令した奴は絶対的に無事というわけだ。


「オレが言えるのはここまでだ…あとはお前が自分で判断するんだな」


言って、シャマルは去った。あとには呆然と立ち尽くす獄寺のみが残った…



「…って、んなわけあるかよ」


シャマルを見送って暫くして、獄寺が正気に戻った。また嘘付かれた。


「合コンって学生がよくする行事の事なんだろ?なのに危険があってたまるかよ」


合コンの厳密な意味は知らないでも、テレビや雑誌でその字は見たことがある。それらの知識を総合させると「学生や大人が集まって楽しむ行事」となった。シャマルの話とは似ても似つかない。

結局何の益にもならない時間だった。と獄寺はため息を吐きながらまた歩き出す。

すると…


「キミ」


今度は声を背中に投げつけられた。この声は…


「もうすぐ休み時間終わるけど、教室に戻らなくていいの?」

「雲雀…」


獄寺は顔をしかめた。会いたくもない奴に会ってしまった。


「考え事してただけだ。そのうち戻る」

「考え事?また彼のこと?」


呆れ顔で言われる。まったく、こいつは他の事を何か考えられないのだろうかと目が言っている。


「今回は違ぇよ。合コンって奴に誘われてそれのことを…」


と告げる獄寺の前、雲雀から物凄い殺気が生まれ空気が変わった。思わずバックステップして距離を持ち身構える獄寺。


「ど、どうした雲雀!」

「合…コン……だって…?」


雲雀の様子がおかしい。一体何があったのだろうか。


「我が校の生徒が合コン………殺す


咬みは。咬みはどこいった。



「ど…どうしたよ雲雀。合コンってあれだろ? みんなで集まって話すだけのイベントだろ?」

「………ああ、キミは合コンについてよく知らないのか…よかった、安心したよ。キミが全て分かった上で行こうとしていたなら…僕はキミを殺していたよ


恐ろしいなお前。そしてだから咬みは。