母子
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ある昼下がりのことでした。

一人の獄寺隼人が、街中に買い物へと出かけていました。

今日の晩御飯の食材を買うためです。


(今日は10代目も一緒だし…豪華な食事にしないとな!)


10代目というのは、獄寺の子供のことです。

血の繋がりこそないものの、獄寺は10代目を実の我が子のように可愛がり育てていました。

しかし10代目はとあるマフィアの次期ボスでもあるので、この間9代目のところに引き取られました。

…と言っても、とあるマフィアことボンゴレファミリーに獄寺は毎日10代目の様子見に行ったりお弁当を作って持って行ったりしているのであまり寂しいという気持ちはありませんでしたが…

とはいえ離れて暮らしていることには変わりなく、明日の夕方にはまたボンゴレへと帰ってしまうので獄寺はこの日をとても楽しみにしていました。


(なににしよう…そういえば10代目、カレーが好きだったな…)


晩御飯のメニュー、そして愛しの我が子のことを考えながらふらふらと歩く獄寺。

そんな獄寺にありとあらゆるところから注がれる熱い視線。

獄寺本人のみ知らないのですが、この街のアイドル的存在な獄寺は常日頃からはぁはぁじゅるりされているのでした。

しかしその辺りの鈍さに関しては極めきっていると言っても過言ではない獄寺はもちろん誰の視線にも全く気付かずいつも通りに町を歩くのでした。

ほとんどの街の人は遠くから獄寺を見るだけで満足しています。むしろ獄寺を見れたら今日は幸せ、話すことが出来たら今年は幸せ、触れることが出来たら人生幸せというジンクスが流れているぐらいです。

けれど世の中には遠目から見るだけで満足の出来ない人もいるわけで…