母子
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「おや。こんなところで会うなんて奇遇ですね」

「奇遇もなにも、八百屋に用事があるんだからむしろ必然じゃねぇの?」


何故か八百屋というポジションに落ち着いている一人の六道骸(変態)が獄寺に話しかけてきました。


「必然!?つまり運命ですね!!嬉しいですよ隼人くんさぁ今こそ僕と熱き二人だけの世界へ…」

「にんじんとジャガイモと玉ねぎをくれ」


獄寺の見事なスルー。


以前まではいちいち相手にしてあげていたのですが、旦那に「やめろ」と言われて「はい、分かりました」と二つ返事。

骸(変態)は若干涙目になっているけど気にしないのが大人のマナー。


「ああ…昔は律儀に付き合ってくれたのに!!なんて世知辛い世の中になってしまったのでしょう!!」

「今日は三人分作るからそっちのでっかいのくれ」


更にスルー技能発動。

しかし骸は獄寺のその言葉におや、と声を出す。


「三人分?もしかして綱吉くんが帰って来るのですか?」

「おう。だから今日は10代目の好物の…」

「それはそれはおめでとうございます隼人くん!!」


突如骸が身を乗り出して祝福の言葉を贈る。


「お、おう…」


流石の獄寺も若干引き気味で答える。いつもならスルーするところだがツナの話題ならば無視は出来ない。


「隼人くんは綱吉くんのこととても心配していましたからね。よかったですね隼人くん」

「ああ…ありがとう」

「僕に出来ることがあればなんでも言ってください。その時はお手伝いさせていただきますよ」

「…おう」


獄寺は思った。こいつ、ひょっとして良い奴?

10代目のことをこんなに気にかけてくれるなんて…そうだな、きっと良い奴に違いない!!と獄寺は思った。


「いいえ。騙されてはいけません」

「うお!?」


と、突如骸の背後から一人の少女が現れた。


「このナップルは沢田さんを立てて獄寺さんを安心させ、獄寺さんを食べてしまう算段なのです…」

「く、クローム…」


困ったように笑う骸。


「妹か?」

「ええ…ほらクローム。挨拶なさい」

「…クローム、です…」


言って、クロームは獄寺にぺこりと頭を下げた。


「獄寺だ。よろしくな」


獄寺が握手をしようと手を差し出す。

それをクロームはそっと受け取って。


「………隼人お姉様……」

「へ?」


二人の間に奇妙な空間が生まれた。


「クローム!隼人くんを変な世界に引き込まない!!あるいは僕も仲間に入れてください!!」


変な空間に骸も加わった。