白銀の麗人
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「…それで、誰に頼まれたのかね」
ああやっぱり。ばれてたか。話が上手く行き過ぎるときは罠の可能性が高い。
「…?一体なんのことでしょうか」
それでも鎌をかけられてる可能性を考慮して。一応とぼける。…無駄だとは思うが。
「下手な嘘は止めた方がいい。………これほど可憐なお嬢さん、一度見たら忘れられない」
………。あ?
あ、あれ?もしかしなくてもオレ… 口説かれてる?
少し気が遠くなったりした。その間にオレの肩に馴れ馴れしく奴の腕が絡んでくる。
「ちょ…止めて下さい」
「だから下手な芝居は止めた方がいい。それよりも―――欲しいのはこれではないのかい?」
そう言ってくる奴の片手に納まっているのは…情報にあったCD-ROM。
「…過ぎた情報は己が身を滅ぼす結果となることを―――ここに警告しておきましょう」
「ああ…その切れるような視線も素晴らしい」
聞けよ!人の話を!!
いっそのこと正体をばらしてやろうかとも思うが、男が何やってんだと白い目で見られたくもなかった。
一瞬の判断に迷っていると、奴の強い力に押し寄せられて…
「…っ、離せ」
言葉が男に戻ってしまったが、声はまだシャマルのモスキートで女のものだから、たぶんまだオレは女だと思われているのだろう。きっと。
「そう身構えずとも…まさか心に決めた相手がいるとでも?」
「―――悪いかっ」
ていうか相手がいなくてもテメーに身は預けねぇよ!!
そんな目で見てやると、奴は少なからず驚いたようだった。
「…まさか相手はボンゴレ10代目とか?だったらやめておいたほうがいい。彼にはもう相手がいるからね。…しかも男だ」
「………え」
思わず、声が漏れる。
え、…だって、一応オレは世間的には10代目の右腕の立場で…一応この事を知っているのは、ごく一部の者だけで……
「ショックかい?まぁ相手が男…しかも熟年バカップルときたものだ」
じ…熟年バカップル!?
確かに、少しばかり10代目のスキンシップは年を追うごとに激しくなってきたけど…
でもそれはオレとしても嬉しくて…
山本に見せ付けるなよといわれても雲雀にうざいといわれてもリボーンさんにこれ見よがしに溜め息吐かれても気にしなかったけど!
ああ、やっぱりこれって普通のよりは少し―――その、熱めだったんだ……
「何でも聞いた話では、おはよう、おやすみのキスは当たり前。少しでも怪我をしたら仕事を放ったらかして素っ飛んで行くらしい」
…え?それって普通じゃないの…?
だって10代目が恋人同士だったらこれくらい当たり前って…あぁ、嘘だったんだ。
「さらに一緒にお風呂に入ってるだの同じベッドで寝ているだの…しかも毎日だそうだ」
「ま、毎日じゃな…っ」
「うん?」
「い、いいえ…それより、その情報はどこで……?」
「おや、出所を疑いで?………ボンゴレを信頼しているのだねキミは。しかし残念なことに、この話は全てそのボンゴレ10代目本人から聞いたことだ」
―――――はい?
「この話は結構有名だよ?ボンゴレ10代目は随分とのろけたいらしく、ことあるごとに「この事は秘密なんだけど…」などと言いながら話してくるからね」
……………。
10代目―――!!
「…黙ってるって、言ったのに……」
「何か言ったかね?まぁそれはともかく――」
とんっと。軽く押されて。思わず倒れてしまう。
「あんな男よりも私の方がキミを幸せにしてやれる…とりあえず、私に身を預けたまえ」
ふ ざ け る な !
どうにかして押しやりたいが、なんか、あらゆるショックから力が入らない…!
「やめ…っ10代目…!!」
「だからボンゴレは来ないと。どうせ今頃噂の右腕と―――」
ガッシャアァアァァァアアアンッ
奴の言葉を遮るように、部屋の窓が蹴破られる。そこから現れたのは―――
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