I pray for your every happiness anytime.
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祈りましょう、祈りましょう。最後の夜に 祈りましょう。

あなたの無事を。あなたの平穏を。あなたの心の安息を。

出来ることなら、祈るだけじゃなくて。オレ自身でお守りしたいのですけれど。

…残念なことに、それはもう出来そうにありませんから。



―――だから。祈りましょう。あなたの無事を 祈りましょう。



オレがその事を聞かされたのは、あれから数時間後のこと。


「え…?」


最初、オレにはその事を理解することは出来なくて。あるいはしたくなくて。


「何度も言わせるな。…獄寺と会うことはもう出来ない」


理解したくないのにリボーンは同じことを告げる。聞きたくないのにオレの耳は正常に働く。


「会えないって…獄寺くんの目が見えなくなったから?」

「それはおまけみたいなものだ。…獄寺の身体はボンゴレに移される」

「な…!?」


ボンゴレ。言うなればことの元凶。そんなところに彼が。獄寺くんが。

獄寺くんは最早彼らにとっては人間ではないのだろう。新薬の実験体。結果的に殺されることになるだろうが生かされることもせず。


「そんな…駄目だよリボーン!止めてよ!リボーンになら可能だろう!?」

「お前は馬鹿か。オレはボンゴレに雇われてるってだけの人間に過ぎねーんだよ。オレがどうこう言うのはお門違いって奴だ」


それにボンゴレの科学班は非人道的な実験を繰り返しているが、だからこそ半端ない成果を上げているのだとリボーンは言う。


「………そう」


リボーンが止められないと言うのなら誰に頼んでも同じだろう。

オレは短く言って、部屋をあとにする。リボーンが後を着いてくる様子はない。

外に出て。歩き出す。目指すべき所はもちろん―――



獄寺くんのところに決まっていた。



そこは真っ暗で。本当に誰かがいるのか不安になるほど暗くて。

どうやって中に入ろうかと悩みつつ取り合えずドアに手をやると、何故か鍵は開いていて。


「………?」


不審に思いつつそのまま入る。いつもは昼に来ているせいか、どこか何か違うような気がして。

壁沿いに暗い通路を進む。いつもと同じはずの道。そしていつもと同じはずの…病室。

ギィッと、微かな音を立てて。ドアを開ける。…獄寺くんがいた。


ただいつもと違ったのは、獄寺くんはその目を開いていたということ。

いつもは眠っていて。オレが近付いてそれで目を覚まして。それで起きていた獄寺くんが。

獄寺くんはオレの存在に気付いていないかのように窓の外をじっと見ていて。



「………」



一歩。近付く。音も立てずに歩いたはずなのに獄寺くんは気付いたようで。こちらを向いて。


「こんばんは。獄寺くん」


獄寺くんが驚いた顔をする。やってきたのがオレだなんて思いもよらなかったのだろう。



「ぇ……ぁっ」



獄寺くんが呻く。苦しそうに。


「獄寺くん…!?」


思わず駆け寄って。その身体に触れると獄寺くんは痛いのかびくりと震えて。


「え…?ぁ、ご、ごめん獄寺くん…」


慌てて手を離す。…しかし。あれ?

今彼は。獄寺くんは痛みを感じないのではなかったっけ?

そう聞いた。けれど今の獄寺くんは…そう、とても苦しそうで。痛そうで。


「獄寺くん?獄寺くん!」


触れることの出来ないもどかしさ。医者を。シャマルを呼んだ方が良いのだろうか。しかし場所が分からない。叫べば来てくれるだろうか。


「えと…どうしよう。って、獄寺くん?」


気が付くと獄寺くんは、苦しそうにしながらもこちらを見ていて。…その顔は、何故かどこか微笑んでいて。



「………相変わらず…あなたは、オレの身を案じてくれるんですね…」



その口調にどこか覚える違和感。ええと獄寺くんは、今…そう、記憶が。でも…?


「獄寺、くん…?」


不安げにその名を呼ぶ。獄寺くんは笑ったまま。



「ええ、オレですよ。……………10代目」



「ご――――っ」


飛びつく。無理だ。身体を抑えるなんて出来ない。


「あいた、いたいた。い、痛いですいたい。10代目…」

「ご、ごく、獄寺くん!獄寺くん獄寺くん獄寺くん!!」