I pray for your every happiness anytime.
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「…え?」


自身から冷たい声が洩れる。獄寺くんも不思議そうにこちらを見てくる。


「それは…それだけは駄目。許さない」

「10代目…?」

「獄寺くんがそれ以上苦しむのは…許さない」


そう。そうとも。

今までの獄寺くんの苦しみを理解出来ず。そしてここまで引き伸ばしてしまったことすら許せないというのに。

なのに…更に苦しみを強いるだなんて。

それは駄目だ。許さない。許せない。そうした獄寺くんの犠牲の上にオレが立つだなんて…そんなの許さない。


「―――でも、オレにはそれぐらいしかあなたのお役に立てないんです…オレは受けた恩をあなたに返したい」

「オレはそんなもの望んでなんかない」


オレがそう言った瞬間獄寺くんの目が見開かれる。そしてその目は悲しみを帯び、顔を俯かせる。


「…そう…ですね。そうですよね。こんなオレの想いなんて…あなたにとっては迷惑でしかないです、よね…」

「違う…獄寺くん、オレは…オレだって、獄寺くんと逢えて幸せになれたから、―――獄寺くんがこれ以上苦しむのを見たくないんだよ!!」


そりゃあ獄寺くんほど…初めて生を実感したとかそれほどじゃないけど。

でも、それでもオレだって。獄寺くんと出会ってからの毎日は楽しくて。―――嬉しくて。

オレは…そう。獄寺くんにそんな大きなものなんて一度も望んでなんかいなかった。

命をかけて守ってほしいとか、遥か未来のオレの為に実験体になれとか。そんなことを望んだことはただの一度も。



オレが望んだのは…それはほんの、些細なこと。



例えば、隣で一緒に歩んでほしい、とか。

例えば、休日一緒に過ごしたい、とか。



…例えば。



すぐ傍で、一緒に笑い合いたいとか。それだけのこと。



「……………でも」


ぽつりと、獄寺くんは語る。


「でも…オレは、このままでは、あなたに何も残せません…」


何か残したいのだと、獄寺くんは言った。生まれた自身の証を何かに。どこかに。


「―――大丈夫。もう残ってる。…獄寺くんがいた証は」

「え?」

「…オレの心の中に、獄寺くんはいるから。…時と共に忘れることもあるかもしれないけど、でもすぐにまた思い出すから」



きっと特に。今日というこの日に。



「…10代目…」


獄寺くんは顔を上げて、そして聞いてくる。…それはちょっとずるいこと。


「―――それで…あなたは。幸せなんですか…?」