With happiness. Good-bye.
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「じゃあ行くか」


あっさりとリボーンがそう言って。ディーノさんも当然とそれに続いて。…あ、獄寺くんも行くんだ。


「なんだツナ。来ないのか?」

「まぁそこで待ってても良いぞ。スモーキンが付いてくるなら」

「なんで獄寺くんを連れて行くんですか」

「狙われてるのが獄寺みたいだから守ってやらんといけねーだろうが」


あ…そうか。一人にしておいたら危険…か。


「それで。ツナは行かないのか?別にかまわねぇぞ。お前に獄寺が守れるとは思えねぇし」

「な…!いや行く!行くからオレも!!」


獄寺くんが行くというのならオレだって行かないわけにはいかない。

独りで彼の無事を祈っているよりも、彼と一緒にいて…出来ることなら守りたいと。そう思うから。


けれどそんなオレの思いも覚悟も。全くの無駄になる。

オレたちが向かった敵のファミリーのアジトは―――…壊滅していたから。



もうもうと立ち上る煙。辺りに漂うは硝煙の臭い。辺りの気温が高いのは先程までここで火薬が飛びまわっていたからか。


「リボーン。どういうことだと思う?これ」


ディーノさんが少しおどけながら問いかける。しかしその目は笑っていなくて…怖い。


「さぁな。生き残りがいれば話を聞けるんだが」

「生き残り…いるのかね、この中に」


ぐるりと辺りを見回すディーノさん。そして溜め息。…見込みは少ない、ということだろうか。


「しかし何故獄寺が狙われたのかは知りたい。一応探してみるぞ」



その言葉に、歩き出す。生き残りを捜し求めて。



リボーンが、ディーノさんが死体を見つけては一人ずつ調べて…首を横に振って。

死体の中には腕が、足が…果ては胴から下がないのもあって…オレは思わず目を背ける。吐き気を堪えることも出来ない。


「…ご、ごく、でらくん…よく平気だね…」

「ん?そうだな…ツナ。辛いなら車の中で待っていたらどうだ?」


いや今独りになるのは危険だから。それぐらいオレにも分かるから。

それにしても…本当に獄寺くんは死体の山を見てもけろりとしている。

…これがマフィアの獄寺くん、なのだろうか。オレの知らない獄寺くん。

まるで遠い、知らない存在のような獄寺くんを前に、オレは―――


「…おい、二人ともあまり離れるな!いざって時援護が出来ねーだろうが!」


その声にはっと正気に戻る。続いて生き残りがいたと言う声。

生き残り。

獄寺くんを狙った奴ら。その生き残り。

何故それをしたのか。その理由を聞くためにオレは走る。…死体はあまり見ないようにしながら。

そしてその後ろを、


「………」


何故か獄寺くんは、たどたどしい足取りで付いてきていた。



前の二人の所まで行く。…一人の男が息も絶え絶えに何かを叫んでいた。

何か、というのは言葉が分からないから。…雰囲気からして罵倒の類だろうか。


「…なんて言ってるんですか?」

「んー…まぁ大体罵詈雑言なんだが…どうやら、ここを襲ったのはボンゴレらしい」

「え?」


ボンゴレ。オレが将来継ぐ、そして獄寺くんが籍を置いているファミリー。


「え…その、何でですか…?」

「分からん。……全く、どうなってるんだ?」

「…そういえばツナ。獄寺はどうした」

「えっ?」


あれ?獄寺くんすぐ後ろに…いない!?


「え?あ、ご、獄寺くん!?」


獄寺くんは少し離れたところの壁に手を付いて、…膝を折って、辛そうにしゃがみこんでいて。


「獄寺くん!?獄寺くんどうしたの!?」


獄寺くんの元へと駆け寄ると、獄寺くんは限界だったのか崩れ落ちて。

倒れこんできた獄寺くんを思わず抱きとめる。背に回った手が滑って…何事かと見てみると、それは血に塗れてて。


「うそ…なに、これ……。ってそれどころじゃない、リボーン!ディーノさん!獄寺くんが!!!」


叫ぶ間にも血は止まらない。獄寺くんから流れるは命の源。それが止まらない。

オレはそれを塞き止めるようにぎゅっと抱き締める。

けれどその程度ではどうにもならないことぐらい、オレにも分かってて―――


++++++++++

思い、悩む。どうしてオレは気づけなかったのだと。

変化に気付いてから嘆くのでは遅すぎる。…そう、全ては遅すぎた。

何故こんなにも時間が掛かってしまったのだろう。彼が倒れてから気付くなんてなんて愚か。


嗚呼…―――けれど。


どんなに早く気付けたのだとしても、既に手遅れであったなんてこと。

今のオレに知る由すらもなく―――