初恋
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リボーンが目を覚ますと、そこは病室だった。

何故自分がこんなところにと記憶を巡らせようとするが、それよりも前に心配そうにこちらを見る獄寺の顔が目に入った。それで全てを思い出した。


「…リボーンさん…よかった、目が覚めたんですね…」

「ああ…」


心底ほっとしている様子の獄寺。しかし次の瞬間には泣きそうな子供のような顔になった。


「リボーンさん…身体の不調は……いつから…」

「……………」


思わず口を閉じたリボーンだったが、獄寺の目がそれを許さない。渋々といった風にリボーンは口を開いた。


「少し前…ほんの数日前からだ」

「―――――」


獄寺が唇を噛み、俯いた。気付けなかった自分を恥じて。

そんな獄寺を見て困るリボーン。まさかそんなに自分を責められるとは思わなかった。


「獄寺…そう、気に病むな。オレはお前にだけは気付かれたくなかったんだ」

「気に病みます…オレは、オレだけは気付きたかった…一番あなたの傍にいたのだから」


朝に告白を受けるとき。昼に擦れ違うとき。夜に挨拶をするとき。昼寝をするリボーンを見つけたとき。無意識にリボーンを目で追うとき。

チャンスはそれこそいくらでもあった。いくらリボーンが隠していたとしても。

なのに気付けなかった。10年も一緒にいて、自分は愛する人の不調一つ気付けないような奴だった。


「…だから…そんなに気に病むな。…痛みが酷くなったのは今朝からだ。それまではそんなに強い痛みじゃなかった」

「痛み…?身体が痛むんですか!?リボーンさん!!」


そういやそこまで言ってなかったか。とリボーンは自らの失言を恥じた。しかし今更撤回出来るものでもない。


「…そうだな、少し」

「酷くなったって今言ったじゃないですか!!」

「…今は収まっている。それは本当だ」


憮然とした表情でリボーンが言う。しかし身体の内側から生じている痛みは消えてない。

熱く燃え上がる炎のようにリボーンを内側から焼いていた。アルコバレーノの呪いだった。


「…悪いな、獄寺」

「え…?」

「忘れていた。オレは呪われた身だ。…こんな奴に告白されても、迷惑なだけだよな」

「迷惑だなんて、そんなリボーンさん…オレは……」


リボーンは目線を上げて獄寺を見る。獄寺の目は確かに嘘など付いておらず、真実のみを語っていた。


「……そんなこと言われたら、勘違いするぞ」

「リボーンさん…」


痛みが強くなる。激しくなる。リボーンの額から汗が出て粒となり、頬を伝って落ちた。

痛みの炎が身を包む。身を焼き尽くそうとする。痛みはどんどん酷くなり、収まるところを知らない。

長くない。リボーンは直感的にそう感じた。

けれど痛みを感じていることをおくびにも出さず、リボーンは獄寺をもう一度見た。不安そうな顔をしている。…自分がそうさせている。それが悲しかった。


「…獄寺」

「…はい?」

「そういえば…今日はまだお前に告白してなかったな」

「リボーンさん…こんな時に……」

「こんな時だから言うんだ。獄寺…好きだ」

「……………」

「出来れば…そうだな、お前からのキスがほしい」

「リボーンさん…そんな台詞は元気になってから……」

「…ダメ、だよな。…ああ、分かってる。お前には長いこと…迷惑を掛けた」

「リボーンさん?」


リボーンの手が弱々しく獄寺の頬へと伸び、撫でた。落ちそうになる腕を慌てて獄寺が支えた。