初恋
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「最後にお前の顔を見れて…本当によかった……」

「リボーンさん、最後だなんて…冗談でも言っては……」

「………―――――」

「…リボーンさん?」


リボーンの目蓋が下がる。獄寺が支えている腕も。


「リボーンさん?」


獄寺の呼び掛けに、リボーンは答えない。ただ力の抜けた腕が獄寺の手から滑り落ち、揺れた。


「リボーンさん……嘘、でしょ?」


リボーンはもう、答えない。

目を開けない。

動かない。


何故なら、死んでしまったから。


「う…そ……リボーンさん……」


獄寺の口から呟きが漏れる。だけどもうそれにリボーンが応えることはない。

そのことにようやく気付き、獄寺は強い自責の念に駆られた。


何も出来なかった。

好きな人に対して。何にも。


この人はただ自分を求め続けてきたのに、それを突っぱね続けた。自分よがりの、酷いエゴで。

それがこの人のためだと信じていた。いつかこれで正しかったと思える日が来ると信じていた。

だけど、その結末がこれか?

報われない。これではあまりにも報われない。


思いを受け取ればよかった。

想いを伝えればよかった。


自分もあなたと同じ気持ちです。と、一言でも言うことが出来ればよかった。

そうしたら、少しは違ったかも知れない。たとえ結末は同じでも、リボーンの心はまだ少しだけ救いがあったかも知れない。

だけど、それすら打ち砕いた。チャンスは出会ってから毎日あったのに。ついさっきまであったのに。

オレもあなたが好きですと、真実の想いを伝えることが出来れば、そうすればリボーンも嬉しかったかも知れないのに。

自分は一体何様だ。この人が自分を望んだのに自分は距離を置いて傷付けて。


「リボーンさん…オレもあなたが……あなたのことが、好きです」


涙を流しながら、獄寺は物言わぬリボーンに告白を返した。

今まで、誰にも告げなかった…墓の中まで持っていくつもりだった、素直な気持ち。


「ずっと好きでした……出会ったときから、ずっと」


絶対に自分が先に死ぬのだと思ってた。最強であるこの人が死んで、自分が生き延びることがあるのは信じられなかった。

だけど、現実はそうはならなかった。リボーンは死んだ。最後まで自分に想いを寄せて。


獄寺は動かないリボーンの肩に手を置く。


出来るなら、今更が許されるのなら。リボーンの最後の願いを叶えたかった。

つい数分前の出来事だ。声すら鮮明に思い出せる。


出来れば…そうだな、お前からのキスがほしい。


リボーンがどうせ叶わないと諦めながら、それでも望んだ最後の願い。

それが出来るのは獄寺しかいなかった。


「リボーンさん…失礼します―――」


獄寺の唇が、リボーンの唇に触れた。