ある快晴の日の下で
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あなたが遠くへ行ってしまうのを、どうしてオレは黙って見ている事しか出来ないのだろう。
あなたに掛けられていた呪いが解けた。それは、それだけならばきっととても喜ばしいことだ。
あなたは今日まで呪いにずっと苦しまされてきたのだから、それがなくなったのなら喜ぶべきなんだ。
―――たとえ、その後に死が待ち受けていようとも。
幾年にも及ぶ呪い。その呪いが、皮肉にも今日まであなたの身体を現世にまで保たせていた。
だから、それが解けたのなら……あなたはもうこの世にはいられない。
泣きじゃくって、無駄だと分かっていても駄々をこねる子供のようにあなたを引き止めたい衝動に駆られる。それを必死に堪える。
その代償なのか、オレの目から何か熱いものがぼろぼろとあふれて。こぼれて。…とまらなかった。
きっと情けない顔をしているだろうから、誰にも見られたくなかった。ましてやあなたになんて。
だからオレは俯いて、顔を誰にも見られないようにしていた。それだけで精一杯だった。
あなたの気配がする。すぐ目の前にあなたがいる。オレは顔を上げられない。
「…獄寺。泣くな」
ないてなんかいません。
声すら出せなかったから、オレはふるふると首を振って答えた。リボーンさんのため息が聞こえる。
ああ、オレはこんなときまで。最後の最後までこの人に呆れられるんだ。笑って送り出すことすら出来ないんだ。そんな自分が嫌だった。
と、頭に何かを被された。それの上から頭を撫でられる。
それに心地よさを感じていたが、不意にリボーンさんの手が離れた。
いや、違う。
離れるというよりは…まるで消えるような、そんな感覚。
「じゃあな。獄寺」
「ま…っ」
待って下さい、リボーンさん!と、そう言いたかった。オレは顔を上げた。
だけどそこには、もう誰もいなかった。
ただ、オレの頭に被せられたあなたの帽子が、あなたがさっきまでここにいてくれていたのを表していた。
オレはあなたの帽子を抱きしめて、もう一粒涙をこぼした。
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さよならさえ、言えなかった。
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