真相
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「リボーンさん。ちょっと宜しいですか?」

「今忙しいんだ。話は後にしろ」

「あ…はい。すいません」


謝る獄寺をリボーンは見向きもせず。書類の束を持ってあっという間に部屋から出てしまう。

一人取り残された獄寺は重いため息を一つ吐いた。


年齢が一回り以上も違う彼に獄寺は恋心を抱いていた。

その想いに気付いたのは…いつだっただろうか。今となっては思い出せない。

気が付いたら彼の姿をずっと目で追っていて…彼の事を考える時間が増えていった。

けれど。…何故か彼は、リボーンは獄寺に冷たい。

それは初めて逢った10年前から変わらず。今でも彼は獄寺につれない態度を取っている。


きっと嫌われているのだ。と獄寺は思った。

だからあんなに冷たいのだと。そう思った。

そう、ひとり落ち込んでいると―――


「なにしてるの?」


聞きなれた声が一つ。

獄寺が顔を上げると、そこには黒髪の青年…雲雀恭弥の姿があった。

雲雀といえば、あのリボーンと初対面の時、外見赤子であるリボーンを容赦せず攻撃して…そして気に入られていた。


「お前はいいよな…」

「え。人の顔を見るなり何言ってるの。ていうかなんでそんな遠い眼してるの?」


何故かいきなり遠い目をして、しかも哀愁を漂わせてきた獄寺を正気に返らせるためにとりあえずトンファーで獄寺をぶん殴った雲雀であった。


「…ふーん。そう」


正気に返らせた獄寺から事情を聞き出した雲雀は開口一番にそう呟く。しかも興味なさ気に。


「ふーんてお前…無理やり聞いておいてその反応かよ…」


獄寺は不機嫌そうに言葉を返す。手は先程殴られた頭をさすりながら。

…というか。手になにやらぬるりとした感触があったから見てみれば真っ赤だった。

どうやら皮膚がぱっくり割れてるようで、血が流れて止まらない。そうしていると目にも血液が入り目蓋が開けられなくなる。


「…ドクターにでも見てもらったら?そのままだとアジト内をうろつけないでしょ」

「てめ…他人事のように。こんな風にしたのはお前だろうが」

「キミがつまらないことで考え込んでいるからだよ」

「…お前にとってはつまらねーかもしれねーけどな…オレにとっては…!」

「だからつまらない事だってば。さっさとドクターの所に行く」


雲雀は獄寺を室内から追い出した。ぴしゃりと扉を閉めて拒否拒絶の意志を示される。


「あのやろ…」


毒付くが、扉を蹴り破ってまで中に入ろうとは思わなかった。

頭に上った血がだらだらと出ているからかも知れない。笑えない。

ともあれ。確かにこのままでいるわけにもいかず。獄寺はシャマルの所へと向かった。


…そんな獄寺と丁度入れ違いに。

先程どこかへと向かって行ったリボーンが現在雲雀のいる室内へと入って―――


「なんで抗争も起きてないのに怪我してくるかねお前は…」


呆れ顔でシャマルが言ってくる。


「うるさい」


にべもなく獄寺が応える。その頭には幾重にも巻かれた白の包帯。


「もうガキでもねーんだからよ。リボーンほどまでとはいわねぇが少しは落ち着きとかそういうのを持てや」


リボーン。

その名前が出るだけでぴくりと反応してしまう。鼓動がひとりでに跳ねていく。


「ん?どした?」


そんな獄寺の変化に気付いたシャマルが聞いてくる…が。獄寺はなんだか思い詰めた表情をしていて…


「…そうだよな…」

「あ?」

「オレなんて…昔から落ち着かねぇで。空回りで。変わらないで…そんなだから、リボーンさんはオレに冷たくて…」


どうやら地雷を踏んでしまったご様子のシャマル。


「…あ?隼人…?いきなりどうした?」


目に見えて落ち込む獄寺にシャマルは声を掛ける…が、獄寺には聞こえてないようで。

シャマルは小さくため息を吐くと、くしゃりと獄寺の頭を撫でた。


「っ、…なんだよ。ガキ扱いすんなよ」

「いや…なんつーか。馬鹿な奴ほど可愛いって言葉を思い出してな…」

「ああ!?てめ、人を何だと思ってやがる!」


受け取った言葉通りに馬鹿にされたと思った獄寺は怒って部屋から出て行ってしまった。手当ては既に終わっていたし。


…そんな獄寺とは。またも丁度入れ違いに。

一体何の用なのか。リボーンが医務室へと入ってきて…


獄寺は自室へと移動中だった。

頭の手当ては終わったが、服は未だに血に濡れている。その着替えをしにの移動だった。

その、途中で。


「獄寺くん…?」


聞きなれた君主の声。

獄寺が振り向くと、そこには思った通りの人物。


「10代目…休憩ですか?」

「あ、うん…丁度お昼だからねってそれより、どうしたの?それ」


それ。


恐らく頭の包帯と服の汚れの事を指しているのだろう。と獄寺は思った。

…実際は獄寺の元気のなさも"それ"に入っているのだが。