本日の主役
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そうして、約束の七時。

ツナの主務室で仕事の話でもあるのだろうと思っていたらしいリボーンは突然の飲み会に多少面食らったようだったが、しかしそれも自分のための会だと分かって。少しは頬の筋肉を緩めていた。

…開始の、10分ぐらいまでは。


「…ツナ」


リボーンが赤い顔をしているツナに声を掛ける。


「んー?何?本日の主役が景気の悪い顔して」

「…なんで本日の主役とやらが飲みの席でジュースなんだよ!!」


ドン!とリボーンは自分のコップをテーブルに叩きつけた。中のオレンジジュースが揺れる。


「だってリボーン、まだ10歳じゃん」

「アホか!酒なんぞお前らが中学生の時から飲んどったわ!!」

「飲んでますか10代目!リボーンさん!!」


不機嫌にリボーンが声を張らす空間に、空気が読めないぐらいまで酔っ払った獄寺が乱入してくる。リボーンは顔をしかめた。


「またうるさいのが来た…」

「あー、またそう言って。リボーンさん飲みます?オレ注ぎます?」

「飲む。注げ獄寺」

「はー…」


い。と返事をしながら酒瓶を傾けようとする獄寺に、


「獄寺くん」


ツナがここぞとばかりに声を掛ける。獄寺は動きを止め、振り向く。


「はい?」

「…ボンゴレ10代目の権限を使って、お酒は二十歳になってからじゃないと飲めないことにする!」

「変に日本的だな!」

「ここじゃオレが法律だからね!」


ビシィ!と親指を上にあげていい笑顔で返してくるツナの姿はまさしく暴君であった。職権乱用であった。

着いていけないとリボーン。しかしそんなツナに着いていく人物がいた。


「すいませんリボーンさん、10代目が駄目って…」

「嫌がらせか?嫌がらせだなこのダメツナが!お前そんなにオレが嫌いか!?」

「まっさかー。むしろ好きだよ。愛してる」


ピキーン!


思わず息が止まった刹那。


「ダメー!ダメダメダメダメそれだけはダメですよ10代目ーーー!!」


獄寺がツナとリボーンの間に入った。というかリボーンを抱きしめた。そして威嚇するようにツナを睨む。何故か仔猫を守る母猫を思い出させた。

それを見て、吹き出すツナ。


「く…っくくくくくく…うん、分かってるから獄寺く…!あははははははは!取らない、取らないから…!」


言いつつ、爆笑しつつ、机をドンドンと叩いている。…初志貫徹で冗談だったようだ。


…なんか、どっと疲れた。


獄寺の腕の中から無理矢理抜けて、リボーンは主務室を後にしようとする。


「…あれ?リボーンさんどちらへ?」

「疲れたから、部屋に戻って寝る…」


子供は寝る時間だもんねー、という声に時計を見てみれば時刻は九時を指していた。

とりあえずむかついたので持っていたコップをツナにぶん投げると、分かってたかのようにツナは避け代わりに後ろにいたランボにいい音を立てて当たった。

15歳の癖にワインを飲んでいたからきっと天罰が当たったんだな。とリボーンは勝手に納得して部屋に戻った。


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ああ、眠い。