起こり得たかも知れない一つの未来
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意識を取り戻すと、心配そうにこちらを見ているビアンキが飛び込んできた。


「―――……!!」


思わず飛び起き、後ずさる獄寺。彼女はゴーグルを付けているので腹痛までは起こらないが、それでもあまり見たいものではない。


「ああ、隼人!!起きたのね!!」

「あ、姉貴…オレは……あの痛みは……」

「…黙っていてごめんなさい。あなたが受けた敵の毒……あれは早急に解毒する必要があったの。シャマルが治してくれたけど、それには激痛という副作用が避けられなかった」

「…なるほど、そうか」


考えてみればそれは当然だった。シャマルは危うく死にかけたと言っていた。それが事実ならあれだけの短時間で完治出来るはずがないのだ。

獄寺は身体の調子を確かめる。痛みは消えてる。動ける。…まだ、戦える。

獄寺は立ち上がり辺りを見渡す。心配そうにこちらを見るツナ。泥だらけで座り込んでいる山本。どこか険の取れた骸の偽者。いつもと変わらないリボーン。戦いは終わったようだ。


「迷惑掛けたな。行こうぜ」

「獄寺くん…大丈夫?山本とここに残った方が……」


どうやら山本は負傷しここでリタイアするようだ。一般人にしては大健闘したと言っていい。手放しで褒めてもいいぐらいだ。


「…いや、オレは行く。骸を倒さねえといけないし……それに」

「それに?」

「ここに"ボンゴレ10代目"がいたら、奴らは全力で叩いてくるだろうぜ。少なくともオレが骸ならそうする」

「あ……」


奴らの目的を騙っている以上、立ち止まるわけにはいかない。ひたすら前に進み、敵の親玉を倒さねば。


「…おい」

「ん?」


ランチアが獄寺に声を掛ける。なんだと振り向くとランチアの目が獄寺を射抜いた。


「…本物の骸は強い……気を付けろ」

「…ああ、任せろ。…お互い無事だったら、偽者談義でもしようぜ」

「なに…?」


怪訝な声を出すランチアには答えず、獄寺は歩き出した。



骸とは会わなかったことにして対バーズ戦。


「さあ!そのナイフで自分の身体を刺すのです!!」

(…こいつは間違いなく性格が悪い……このナイフには十中八九毒が塗られていると考えていいだろう)

「ご、獄寺くん…!!」

(ならば…)


獄寺は大股でずかずかとバーズに歩み寄る。予想外の行動に戸惑うバーズ。


「ち、近付くな!!一般人の女の子がどうなってもいいのですか!?」

「やってみろよ」

「!?」

「獄寺くん!?」

「ただし…それをしたらお前を拷問に掛ける。ガキだからって馬鹿にすんなよ。一秒間に生まれてきてごめんなさいと100回は言いたくなるようなことしてやるよ」


言いつつ、獄寺はナイフをバーズの鼻先に突きつける。


「ひ…!!」

「引き返すなら今だ。ここで拷問を受けるか…気絶するか。選ばせてやるよ」

「………!!ジジ!ヂヂ!やめなさい!!」

「分かってくれてオレも嬉しいぜ」


獄寺はバーズを蹴り飛ばした。



対M・M戦は飛ばして廃墟内。


「………」

「…どうしたの獄寺くん。辺りを見渡して……」

「いや…先に行っててくれ。オレはちょっと野暮用を片付けてくる」

「え!?」

「…獄寺。勝手な行動は……」

「ですから、頼んでるんです。…お願いします、リボーンさん」

「………仕方ないな。好きにしろ」

「ありがとうございます」


微笑み、獄寺はみんなを先に行かせ自分はその場に留まる。

やがて現れたのは…ヨーヨー使いの柿本千種。


「…ん?どうしてお前がここにいる」

「なんだ?ボンゴレ10代目がお前らの本拠地にいちゃおかしいのか?」

「他の人間が見当たらず、この場にお前だけ…というのはおかしいな」

「地の利はそっちにあるからな。地形を利用して挟み撃ちぐらいはしてくると思ったから、待ち伏せしていただけだ」

「…ボンゴレ10代目自らが、か?」

「何でも部下に任せるボスに一体誰が着いていく?それに、オレの武器はこういう場でこそ活きるからな。適材適所って奴だ」


言うと同時、獄寺は指を鳴らす。

途端、柿本が来る前に仕掛けた爆弾が一斉に爆発した。

爆発により吹き飛んだ瓦礫が柿本の頭上から振ってくる。

廃墟を爆破したのに、柿本の頭上以外は驚くほど崩れない。人間爆撃機の本領発揮だった。

されど柿本もその程度で倒れるような柔な男ではなかった。瓦礫の中から這い上がり、立ち上がる。