起こり得たかも知れない一つの未来
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「…タフな野郎だぜ」
呆れたように呟く獄寺。対峙する二人。しかし柿本はふと何かに気付き、呟いた。遅いぞ、犬。
その言葉の意味を獄寺が理解するよりも先に、背後の壁が壊された。先ほど山本と戦い敗れたはずの城島犬が獄寺に襲い掛かる。
「な―――」
獄寺を押し倒し、殺そうとする犬。
獄寺が命の危機を感じたとき、また別の壁が破壊された。獄寺はこの廃墟崩れないだろうなと心配した。
ともあれ、壊れた壁の向こうから現れたのは………
「…キミたち。何群れてるの?」
血だらけで、しかしその目に確かな光を携える…我らが雲雀恭弥。
獄寺も雲雀とは面識がある。二人の目線が合わさり、そして雲雀は獄寺を押し倒している犬に目を向け…蹴っ飛ばした。
「きゃん!!」
「その子を押し倒していいのは僕だけだよ」
お前は何を言ってるんだ。
獄寺は内心で突っ込んだ。あと今まで必死で頑張ってシリアスな空気作ってたのにぶち壊してくれやがって。とも思った。
そう思う間に雲雀は容赦なく柿本と犬をしばき倒していた。あっという間に二人が動かなくなる。
「…お前……強かったんだな」
「惚れた?」
「ところで雲雀、シャマルから預かりもんだ」
獄寺は雲雀を軽くスルーした。
「…シャマル?シャマルってあの保健医?…何?キミと一体どういう関係なの?」
「昔の知り合いだよ」
「昔の男?」
「お前黙っててくれねえかな?」
言いつつ、獄寺はシャマルより預かった処方箋を取り出す。もし雲雀に会ったら渡してやれと言われていたのだ。
「にしてもお前…自力で脱出出来るんならとっととすればよかったのに」
「ふ…実は今の今までうたたねしててね。愛しいキミの声が聞こえたから起きて出てきたんだ」
「お前実は超余裕だろ」
「ところでキミ、何で僕のメール無視するの?僕なんかした?」
「あー、あれな。うちのボスが勝手に設定しちまったんだよ、悪かったな」
「…ということは僕、キミに嫌われたわけじゃないんだね」
「ああ、まあ、別に好きでもねえけどな」
ともあれ、と獄寺は歩き出す。思ったより時間を食ってしまった。早くツナたちに追いつかねば。
「あれ?肩とか貸さないで大丈夫?」
「んー?お前が出てくるのがもう少し遅かったら深手を負ったかも知れないけどな。大丈夫だ」
「僕の馬鹿!もう少し待てばよかった!!」
雲雀は嘆いた。
最後の部屋に着き。獄寺は景気づけにダイナマイトを一発放った。爆発音が響き辺りの視線がこちらへと向く。
「ほお…あなたがボンゴレ10代目の……獄寺隼人くん」
どうやらまだバレてないらしい。ならば精々騙されてもらおう。
「…ああ。悪いな、主役が遅れちまって。お前の相手はこのオレだ」
「いや、僕だよ」
雲雀が一歩前に出る。骸が面白そうに笑った。
「おやおや…あれだけ痛めつけて差し上げたのに、まだ立ち向かうなんて…雲雀くんは馬鹿ですねえ」
「何とでも言いなよ。…だけど、今までの僕と同じだとは思わないことだね」
「ほお?」
「彼の愛を受け取った僕が、誰にも負けるはずがない!!」
お前はもう死ね。
「お、おや…まさかあなたがた、そういう関係だったとは……」
「ちげーよ!!」
「照れなくてもいいのに」
「照れてねー!!」
微笑を残して雲雀はステップを踏む。骸へと飛びかかる。
獄寺も雲雀のフォローに回ろうとするが…二人の距離が近くそれも出来ない。
そもそも、獄寺のフォローを必要としないぐらい雲雀の動きは完璧だった。獄寺は雲雀を見直した。
そして、やがて雲雀は骸を倒す。骸は勝機がないと悟ったのか、自害した。
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