IF ヴァリアーの場合
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非日常が日常に移り変わりつつあった。

外に出れず、広いヴァリアーアジト内を探索する日々。

ルッスーリアは変わらず世話を焼き、レヴィとマーモンは無関心。

ベルはあれからも何かとちょっかいを出してきて、獄寺も最近はあしらい方を覚えてきた。

その他トラブルに巻き込まれることもあるも、基本何も言わないが気にかけてくれているのか、スクアーロが事態を収拾してくれる。


敵対ファミリーの人間に命を狙われたり、さらわれそうになったこともあった。


これが以前スクアーロが言っていた、ボスの言葉があるからこその殺される理由のようだ。ボスのお気に入りを殺し、挑発。さらって、脅迫。

そしてそのザンザスは…外に出ているのか仕事が忙しいのか、変わらず会っていない。

ヴァリアーの面々は情報を隠すという考えが全くないようで、獄寺が見に行けばどんな情報も知れた。


ヴァリアーの構成員、武器、戦術。使っている暗号に隠れアジトの場所。

ボンゴレリングなるものの存在や、ゴーラ・モスカというロボを作っている部屋まで見つけた。


もしこの情報を自分が他のファミリーに売り飛ばしたらどうするつもりだ、と獄寺は呆れたがすぐに思い直す。

そもそも、自分はここから出られない。だから情報が漏れることはない。

更に言うなら、自分はここでは飼われている身であり、ペット扱いであり、動物相手に情報を隠すも隠さないもないのだろう。

つまりは舐められているというわけだが…確かに色んな面で、獄寺は彼らに敵わない。ベルも自分にはかなり手加減しているのが分かる。



―――それでも。

獄寺は、諦めてはいなかった。

自分の夢を。

自分の力を周りを認めさせ、ファミリーに入ることを諦めてはなかった。



そんなある日の夜。

月も隠れ、暗闇の中。

獄寺は通路を歩いていた。

長くアジトを探索し続けたからか、その足取りは迷うことなく。ある目的地へと進んでいた。

やがて辿り着いたその場所は、アジトの中でも一際大きく、立派な扉。

ヴァリアーのボス、ザンザスの自室。


「………」


獄寺は無言で扉を睨めつけ、闇に紛れて影に隠れる。見れば獄寺の纏っている服も黒で、周りからは見えづらい。

獄寺は闇の中、ただじっとその場に留まる。

まるで何かを待つかのように。



どれほど、時間が経ったのか。

月の位置が大きく変わった頃、目を閉じていた獄寺の瞼が開かれ、虚空を睨みつける。

程なくして、現れる数人の男。

足音もなく現れ、その身は緊張感に包まれ。手には拳銃、眼には強い意志。

彼らは獄寺に気付かず通り過ぎ…そして一番後ろにいた男を獄寺は背後から襲いかかり、片手で口を塞ぎ、片手に握っていたナイフを男の喉元に滑り込ませる。

血が吹き出し男が痙攣しながら倒れる。それより先に獄寺は前に飛び、未だ後ろで起こった惨劇を知らぬ男の命を狙う。

しかしそこからは男たちも気付き、予想外のことに多少取り乱しながらも獄寺に反撃してくる。

闇に消えながら、小柄な体格を活かしながら。わざと身体を傷つかせながら、獄寺は相手を屠っていく。

やがて…その場に立つのは一人だけになった。

髪と服を赤く濡らした少年。獄寺隼人。

獄寺は予想以上に時間が掛かったことに舌打ちしつつ、その場を去ろうとする。

そこに…


「久しぶりにオレの近くまで来たってのに、顔も見せねえのか?」