意外な一面
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「…てめえらさっきから聞いてれば好き勝手言いやがって…!!」
怒気を含んだ声に正気に返らされる。見ればベルが怒っていた。
「隼人は言ってたんだぞ!家族がよくわからないって!!お前らは自分の気持ちを押し付けてばかりで、隼人のことなんて全然考えちゃなかったんだ!!そんな奴らが今更家族面するんじゃねえ!!」
「ベル…」
身を挺し、獄寺を守るベルにツナの心が打たれた。
もう獄寺くんはヴァリアーにいればいいんじゃないかな。とも思った。
「もう行くぞ隼人!こんな状態だし、寿司はまた落ち着いてから食べに行こう!!」
「お、おう…」
獄寺の手を引いて立ち去ろうとするベル。そこに。
「お客さん。お会計」
店主の声がひとつ。
「お、おおそうだった。ほいカード」
「うちは現金のみでさあ」
「何…!?しまったそういやそうだった!!」
ベルは狼狽した。ベルはカードしか持ち歩かない主義なのである。
獄寺が弱々しく懐から財布を取り出す。
「ベル…少ないけど、注文した分ぐらいなら入ってるから……」
「隼人…うっ、兄ちゃんが奢ってやるって言ったのに…!!」
「会計は30万です」
「何!?どういうことだよ!オレらそんなに頼んでねえぞ!?」
「あちらのお客様があなたがたに自分の分も払ってもらうようにと」
言って店主が指さした方角には満腹笑顔のリボーンの姿。
あいつこの場を掻き乱すことしかしてねー!てかあいつ一人でどんだけ食ってんだよ!!とツナは内心で突っ込んだ。
「…悪いベル。流石に30万は入ってねえや……」
弱々しく獄寺が笑う。ベルはどうするか悩む。
すぐ傍では山本が笑いながら色紙を差し出していた。そういえば獄寺のサインで会計チャラだった。
しかし。ベルはその方法を取りたくはない。ボンゴレに借りなど作りたくない。隼人の手を煩わせたくない。だが他にいい方法もない。どうする。どうすれば…
悩むベルの横、獄寺が手を伸ばし、色紙を取る。ベルが驚く。
「お、おい隼人…」
「いいよベル…これしか方法はないみたいだ。オレが犠牲になって、二人が助かるなら……それでいいじゃねえか」
「だけど…っお前嫌だろ!?こんな…こんな自分を切り売りするようなこと、したくないだろ!?」
「んなこと言ってる場合かよ……で、あんた…これにオレの名前を書けばいいのか?」
「ああ!あと山本武くんへって入れてください!!」
「お安い御用だ…ついでに握手も、ピアノの弾き語りだって、望めばやってやるぜ」
「マジで!?」
「隼人…!!」
獄寺の自己犠牲っぷりに涙するベル。こんなことさせたくないのに、こうするしか道がないのが悔しくてたまらない。
獄寺がマジックの蓋を取り、色紙に書こうとする。
マジックと色紙の距離があと二ミリ…というところで、
ドーン!!
店の扉が蹴破られた。
辺りの視線がそちらへと向く。開かれた入口からのっそりと現れたのは、我らがボスたるザンザスだった。
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