いいわけ
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「…獄寺くん」

「はい」

「獄寺くんはさ…なんか、儚いイメージがあるんだよ」

「儚い…ですか?」

「そう…うん、まるで雪のような。そこにあるのに、捕まえれば溶けて消えてしまう雪みたいな、そんなイメージが、獄寺くんにはあるんだ」

「オレは溶けたりしませんよ」

「分かってるよ。分かってるけど、でも…」

「でも…なんです?」

「なんだろ…そう、この感じはあれだ。獄寺くんは縁日の風船みたいでもある」

「今度は風船ですか」

「そう。…オレさ、よく縁日で風船貰うんだけど、でも無事にうちまで持って帰れた事ってない」

「そうなんですか?」

「そう…いつも途中で手放しちゃう。―――玄関ですっころんで逃がした時は衝撃だったなぁ…」

「それは災難でしたね」

「そう…だから」

「はい?」


「―――この風船だけは、手放したくないんだよね」


「10代目…」

「………」

「……それが、今抱きついてることの言い訳ですか」

「―――駄目?」

「別にオレ、逃げも隠れもしませんけど」

「分かってるけど、でも獄寺くんの細い腰を見ていたら抱きしめたくなるのは自然の摂理というか…」

「そこまで言いますか」

「そりゃ言うよ。本当の事だもの」

「…雪は手にすると溶けますよ?」

「獄寺くんは雪じゃないから大丈夫」

「風船でもありませんけど」

「もう、ああ言えばこう言う」

「え、オレが悪いんですか?」

「悪いよー?ていうか、どうしてそんなにオレが抱きつくの嫌がるかな?獄寺くんはオレに抱きついてほしくない?」

「…といいますか、こういうの慣れてないんですよオレ」

「こういうのってどういうの?頭撫でるの?腕組み?抱きつき?」

「全部です全部。オレ子供の頃からそういったのと無縁で…今更、こんなことされてもどういった反応を示せばいいのかまるで分かりませんから」

「―――獄寺くん…」

「ですからオレにこんなことしても10代目の希望するような反応はきっと―――ってどうしてますます強く抱きしめるのですか貴方は!!」

「そういうところがあるからますます抱きしめたくなるんだよ!もう駄目もう無理!オレもう獄寺くん絶対手放さないから!!」

「10代目苦しいです!よく分かりませんけどまず力抜いて下さいー!!」


++++++++++

やーだ!離さない!!