一寸先は恋
2ページ/全5ページ


おかしい。

獄寺隼人はそう思っていた。

何故。自分はリボーンさんばかり見てしまうのだろう?

ここは10代目のお宅で、自分は10代目の右腕で。だから自分が見るべきは10代目のはずだ。

いや、無論のことリボーンさんを視界に納めるのが嫌と言っているわけでは決してない。

リボーンさんのことは尊敬している。敬愛している。憧れで、目標だ。

しかしそれはそれ、これはこれだ。まぁリボーンさんと10代目は近くにいることが多いからそれでだろう。あ。リボーンさんがコーヒーを啜っている…渋い……じゃなくて。


「一体…これはどういうことなんだ?」


丁度綱吉とリボーンが席を外したので、獄寺は思わずそう声を漏らした。

それに応える声が一つ。


「それはね、隼人。愛よ


ビアンキだった。


「姉貴!?」

「隼人…貴方もまた一つ大人の階段を上ったのね。貴方もとうとう愛を知ったのね…」


突然の姉の登場に驚きを隠せない獄寺に対し、ビアンキはマイペースに自分に酔っていた。ちなみにビアンキは眼鏡を掛けているので獄寺はぶっ倒れないで済んでいる。


「愛…?オレが…リボーンさんに?」


愛だの恋だの、今までよく分からなかった。

そんなもの体験したこともなければ、与えられたこともないと獄寺は思っていたから。

けれど。

これは恋だと、愛だとそう前提を置いて今までを振り返ってみる。


リボーンさん。


そう、名前を心の内で呼び、顔を思い出すだけで心音が跳ねる。

褒められるとその場で舞い上がってしまいそうになるほど嬉しく、叱られれば正直泣いてしまいそうなほど辛い。


綱吉に会って初めに確認するのが、いつしかあの小さなヒットマンを探すことになっていて。いたら嬉しくいなければ悲しく。

何故か気付けばずっと見ていて。でも目が合いそうになるととっさに反らして。また見てしまって…


声を掛けられると幸せで。


こちらの声に応えてくれると幸福で。

…誰かと話している姿を見るとちょっと切なくて………