一寸先は恋
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「これが…愛?これが恋か…?」
「むしろそれが恋じゃなかったら世の九割は恋じゃないわよ隼人」
マジか。獄寺はそう思った。そうか、自分はあのリボーンさんに恋をしていたのか!!
「って、どうしたの隼人。後ずさって」
獄寺はビアンキと距離を置くように後ろに進んだ。
何故ならビアンキとリボーンは愛人だ。弟とはいえ容赦はしないだろう。そして自分はビアンキには勝てない。袋小路だ。
「安心しなさい隼人。リボーンに愛人が何人いると思ってるの?今更そこに貴方が増えても私はなんとも思わないわ」
「愛人…?馬鹿野郎、愛人という関係で満足いくか!!男ならやっぱり本妻狙いだろ!?」
「ごめん隼人。今日の貴方はハル並によく分からない」
熱が入りすぎているのかあっさりと矛盾したことを宣言する獄寺に対し、ビアンキは冷静に突っ込んだ。
そんなビアンキを無視し、獄寺は再確認する。自分がリボーンのことが好きなのだということを。
そう思えばなんだか今更ながらに照れてくる。顔もなんだか熱い。
「姉貴…オレ、リボーンさんに告白してみる。振られるかもしれないけど、でもこの気持ちを伝えたい…!」
「…そう。なら頑張りなさい隼人。成功したら祝ってあげるし、失敗したら骨は拾ってあげるわ」
「ああ…」
獄寺が頷くと同時、席を外していた綱吉とリボーンが戻ってくる。リボーンを視界に納めると同時、恋を自覚した獄寺の顔が瞬時に赤くなった。
「リ…リボーンさ…オレ……!!」
緊張のあまりに声が掠れてしまっている獄寺。そんな獄寺の前に一歩、リボーンは歩み寄り、
「おい、獄寺。ちょっと話が…」
手を、伸ばした。
リボーンの手のひらが獄寺に触れる。
リボーンの小さな指先が、獄寺の手に触れる。
好きな人が、自分を見て、自分の名前を呼んで、自分に触れてきた。
その事実を認識したとき、獄寺の脳内はパニックに陥った。
詳しく言うと、頭の中が熱湯でも浴びたかのように熱くなり真っ白になった。
先程のリボーンの声が獄寺の脳内で何度も何度もエコー付きでリフレインし、今まさに触れ合っている指先以外の感覚が消え失せている。
「あ…」
何か、何かを言わなければと思うが喉の奥がカラカラで上手く声が出てこない。
触れ合っている指先が熱い。
だから獄寺は弾かれたかのように手を離した。他意などない。熱したヤカンに触れたら思わず手が逃げるようなものだ。
そしてリボーンの感覚が消えて…そこで獄寺の時がようやく動き出す。ちなみにリボーンに触れられてからここまで僅かコンマ一秒しか経ってない。
「ご…ごめんなさいリボーンさん!オレ今日はこれから用事があるので失礼します!!!」
言うが否や、獄寺はその場から脱兎のごとく逃げ出した。
心音がバクバク言っているのは急にダッシュをしたからではない。
顔が真っ赤になっているのは沈み行く夕日が獄寺に当たっているからでもない。
視界がぼやけている、と思ったら泣いていた。
拭おうとして、手が震えているのに気付いた。それどころか身体中が寒いわけでもないのに(むしろ熱いぐらいなのに)震えていた。
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