過去と未来とその真相
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―――過去に戻ったら、どうか。…入江正一を殺して下さい。
そうすれば……白蘭もきっと………
その言葉を残し、この世界のオレは姿を消した。
どうして、そんなことをオレは言ったのだろう。
元凶が例え違ったとしても、相手はリボーンさんと10代目を殺したファミリーのボスなのに。
どうして、まるで庇うような発言を。
…分からない。
この世界に来たばかりのオレは、現状の把握はおろか白蘭の顔すら知らないのに。
周りに聞いても白蘭については不明瞭な箇所が多いという返答ばかり。
…その、不明瞭だと言う白蘭を、どうしてこの世界のオレは知っていたんだ?
状況は発展しないどころか、ますます謎を深まらせ…オレを混乱させていく。
この世界のオレは、白蘭と面識があったのか?それも親しいと言えるほどの。
もともとある程度の交流があって、それから裏切られたのか…それともオレが潜入任務か何かしでかしたのか。
分からない。実際会って話でもしない限りは。
…そこまで思って、気付く。オレが白蘭に興味を持ってきているということに。
気付いて、苦笑する。
………そんな感情、意味がないのに。
だって入江がオレだか誰だかに殺されて、この世界とはまた違う意味合いを持つ白蘭とは別の世界の話なのだから。
この世界の白蘭には、オレたちを殺し尽くすかオレたちに殺されるかの二択しかもはや残ってない。
白蘭はオレたちの大切なものを奪い、壊した。
その落とし前は、自身の命を持ってしか償えない。
―――オレがこの手で償わせてやる。
懺悔は要らない。辞世の句も聴かない。言い訳なんて必要無い。
この世界ではそんなモノ。何の足しにもならないのだから。
そうしてオレは、宣言通りに白蘭を殺した。
オレはこの世界の10代目と、リボーンさんの仇を取った。
だと言うのに、オレの胸には何の満足感も充実感もありゃしない。
有るのはただ、やるせない…胸くその悪い、最低な気分だけ。
殺しなんて慣れてるはずだった。なのにオレはまるで初めて人を殺したときのように吐き気と頭痛を覚えた。
どうしてか、涙も流した。
その理由も分からぬまま。
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