過去と未来とその真相
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そうして、オレたちは現代に帰ってきた。平和な並盛の町へと。
変化は、ないはずだった。数ヶ月分の時間が経ってるとはいえ、目新しい変化などどこにも。
そう、思った。
だけれど…
「チャオ!初めまして!僕は白蘭!!」
とんでもない変化がオレを待ち構えていた。
オレの部屋の直ぐ隣。
そこに新しい住人が引っ越してきていた。
そしてそいつこそ…未来でオレが殺した相手。
白蘭だった。
面食らうオレに白蘭は首を傾げていた。それもそうだろう。未来のことなどこいつには分かるまい。
オレはどう対応して良いか分からず、曖昧な態度を取ってしまっていた。
だってそうだろう?未来のこいつを、オレは殺したのだから。
なのに殺した相手にニコニコ笑われて慕われて。未来の白蘭には恨む理由は山ほどあったが、今隣にいるこいつには何の罪もない。
正直、気不味かった。変な罪悪感もあったのかもしれない。オレは白蘭に冷たく当ることは出来なかった。
オレになんて近付かなければ良いものの、白蘭はオレのどこが気に入ったのか良くオレに声を掛けてきた。ニコニコの笑顔で。
白蘭を邪険に扱えないオレはそのつど応えていた。そして気付けばオレは白蘭を気に掛けるようになっていた。
罪滅ぼし、のような感傷だったのだと思う。あの世界はともかく、今目の前にいる白蘭は素直で馬鹿正直な憎めない奴だったから。
白蘭は感情豊かな奴だった。
笑いたいときに笑いたいだけ笑い、泣きたいときに気が済むまで泣く。嬉しいときはこっちがうんざりするぐらい喜び、怒ったときは癇癪を起こす子供のように暴れた。
オレのガキだった頃と真逆だなと思った。昔のオレはとにかく感情を抑えていたから。
頼りない白蘭は、なんだか保護の必要な子供のようにも思えて。
白蘭も恐らくはオレを保護者か何かだと思っていたのだろう。何かあるたびに相談を持ちかけてきた。
オレと白蘭は、そうして長い時を一緒に過ごした。いつしか一緒にいることが当たり前になっていた。共にいることで穏やかな気分を白蘭は与えてくれた。
だけど…平和な時間を流してくれていた世界は、やがて軋みを上げ初める。
「隼人ちゃん隼人ちゃん、あのね。僕最近友達が出来たんだ」
隼人ちゃん、というのは白蘭のオレの呼び名だ。男相手にちゃんはねーだろ、と何度言っても聞きやしない。
「そうか。友達か」
オレがそう返すと、白蘭は嬉しそうに楽しそうにうんと頷いた。
「あのね。その友達のしてくれるお話がとってもとっても面白いの。今日もお話を聞きに行くの」
「そうかそんなに面白いのか。なら、オレにも聞かせてくれよ」
といっても白蘭の言う"面白い"レベルは結構低いが。白蘭はハッピーエンドの話ならどれでも"面白い"と言う。
「うん、あとでね!まだ僕も途中までしか聞いてないの。全部聞いたら隼人ちゃんにも教えるね!!」
「そうか、じゃあそのときを楽しみにしてるな」
「うん!!」
そう言って、白蘭はその友達のところへと向かった。
一度誘われた。だけどオレはボンゴレの集まりがあったから断った。
白蘭にはオレがマフィアであるということは伏せている。無理に知らせる必要はないと判断したからだ。
ボンゴレ関係でどうしても白蘭を離れなければならないとき、白蘭は決まって癇癪を起こした。
どんなところなんだ自分よりもそんなに大事なところなのかと激しく問い詰められた。
だけど、まぁ、大事だなぁ…大事すぎてお前殺したぐらいだし。とは流石に言えないが。
なので白蘭は白蘭で友達を作り、オレから離れると言うことは有り難くもあった。
だけど、
もしもこのときオレはフリーで、白蘭と共にその友達のところへ行けたのなら………
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