過去と未来とその真相
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白蘭は少しずつ少しずつオレとの時間を置いて行った。オレよりも友達との時間が楽しいと言わんばかりに。
そのことに多少妙な感情が沸いたものだ。初めての感情にオレは戸惑った。
それが嫉妬であったと言うことに気付けるのは、このときからするとまだ先の話で。
平和な世界は色褪せ、軋み。崩れ、壊れていく。人知れず。誰にも知られず。
そして―――やがて。
「隼人ちゃん」
決定打が、来る。
「?何だ白蘭」
「隼人ちゃんはマフィアなの?」
「は?」
オレは面食らった。初めてこの世界で白蘭とあったときのように。
「隼人ちゃんはマフィアで、人とか殺して…ううん、殺させられて、必要とあらば誰かの為に死ぬの?」
「白蘭…?何を言って……」
「答えて」
「……………」
オレは、嘘を付くことは出来なかった。
オレは正直に話した。そのとき、白蘭の瞳に…狂気が見え隠れしていたことにオレは気付けなかった。
話をし終えてると、白蘭は「分かった」と呟いてマンションを去った。
それから、白蘭はあの部屋に戻ってくることはなかった。
マフィアであることで…それを隠していたことで、嫌われたかな。と思った。
オレは何故だか胸に穴が開いたような気分を味わった。何故か哀しい気分だった。
だけど、それに浸る時間はあまりなかった。
ボンゴレ関係者の、命が狙われる事件が起こり始めたからだ。
オレは10代目の護衛に入った。犯人を捕まえられるように。10代目に掛かる火の粉から守れるように。
何日かそうして過ごしていたら………誰かの悪意を感じた。
向けられるナイフをかわし、犯人を捕まえる…が、オレは思わず手を離した。
そこにいたのは、白蘭だった。
白蘭は憔悴しきっていて、錯乱していた。オレを見る目も焦点が合っていなかった。
「隼人ちゃん…やっぱり隼人ちゃんはボンゴレに縛られているんだね命を掴まれているんだね無理な命令を押し付けられているんだね本当は痛いだろうに苦しいだろうに嫌だろうになのにボンゴレに無理やり言うことを聞かせられているんだよね嗚呼なんて可哀想な隼人ちゃん…!僕が、僕が助けてあげるからね痛みからも苦しみからも無縁な世界で僕と一緒に暮らそうね隼人ちゃん!!」
「白蘭、落ち着け!!!」
一体何をどこでどうしたらそんな結論になるのかオレにはまったく理解不能だったが、白蘭の奇行の根源にオレがいるらしい、と言うことは分かった。
「白蘭!オレは縛られてなんかない!オレはオレが望んでボンゴレにいるし、命を捧げているし命令を聞いてるんだ!!」
「嘘だ!!!」
キン、と甲高い声が響いた。オレは一瞬怯んだ。
「だって言ったもの!隼人ちゃんは望まない戦いに身を置いてるんだってボンゴレさえいなければ危険な目にも遭わないって死にそうにもならないって!!―――正ちゃんがそう言ったんだもん!!!」
「―――!!!」
正ちゃん。
その言葉に、オレは言葉を失った。
…この世界に戻ってきたばかりのとき。オレは入江正一を探した。…あの世界のオレが残した言葉通りに、殺すために。
だけど見つからなかった。どこにも痕跡が見当たらなかった。
きっと未来のオレが始末したのだと、そう思った。数ヶ月もの時間があったのだから綺麗に跡形もなく始末したのだと。
…なのに。
「…生きて…いたのか」
全ての元凶は。
呆然とするオレから、白蘭は逃げた。
オレは白蘭を追いかけて、捕まえて…説明をしなくちゃいけなかったのに。
むしろボンゴレにオレがいたからこそ、オレはお前と会えたんだ。と。
あの場所はオレにとってとっても大切な場所なんだって。
なのにオレの足は動かなく。
いつしか頭上に雨雲が顔を覗かせて。オレに雫をこぼしてた。
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