覚悟して?
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「貴方が10代目を降りて、オレが「日本に残る」なんて言ったら」


それは、それから先の発言は。聞いてはいけないと思った。


「オレはボンゴレファミリーの裏切り者として」


けれど、オレは彼を止められなかった。だから聞いてしまった。



「殺されますから」



彼の、意思を。

―――どうして彼は、そんなことを笑って言えるのだろうか。

他の誰でもない、自分自身のことなのに。どうしてそんなにも朗らかな顔で言えるのだろうか。


「…あ、大丈夫ですよ。10代目」


きっと。そんな日が来ようとも。

貴方にはそんな気配は微塵も感じさせないでしょう。

リボーンさんなら、それぐらいのアフターケアはしてみせますよ。

貴方と別れる日。オレは大きなトランクを持って貴方と少しだけ話をする時間が与えられて。

そこでは「また逢いましょうね」なんて、そんな再会を思わせるような台詞を吐いて。

笑って貴方と別れるんです。オレは始終笑顔で。

出来ますよ?そういうのはオレ、結構得意なんです。

そして、オレはボンゴレファミリーで最後の意思を聞かれて。

オレは答えるんです。「オレの意思に変わりはない」って。

それでオレの処分は決まったのに、オレの口は止まらなくて。

オレは最後の台詞を吐き終えることもままならないまま、背後から―――


―――パァン!!


「…痛いです、10代目」

「獄寺くんが悪い」

「オレがですか?」

「そうだよ」

「10代目が聞いてきたことじゃないですか」

「そうだけど…獄寺くんはそれでいいの?」

「はい?」

「獄寺くんはオレが10代目にならないって言っても、それでもオレに着いてきて。…それでボンゴレに殺されても……いいの?」

「いいですよ?」

「…ごめん獄寺くん。もう一発殴っていい?」

「出来れば遠慮したい所ですが…まぁ、どうぞ」

「あのね…そこまで慕ってくれるっていうのはもちろん嬉しいけど、でもそれで獄寺くんが死ぬというのなら話は別」

「そうは言われましても。貴方が10代目を降りたらオレに残された道は二つに一つですから」

「二つ?」

「はい。…身体の死を取るか、心の死を取るかです」


獄寺くんは笑いながら。


「貴方と二度と逢えないなんて、そんなことになったらオレの心は死んでしまいます」


そんなのオレは嫌ですから、だからオレは心を取った。それだけの事です。…なんて、無垢な顔のまま言わないでほしい。


―――何も言えなくなるから。


「…獄寺くん、ずるい」

「はい?」

「…そんなこと言われたらオレ、何が何でも10代目になるしかないじゃん」

「どちらにしろなるおつもりだったのでしょう?ならいいじゃないですか」

「そうだけど―――やっぱりずるい」

「はぁ…それはすみません」

「…獄寺くん、何が悪いのか全然分かってないね」

「ええ。全然分かりません」


何の悪びれもなく言う獄寺くんに、恐らく本当に全然分かっていない獄寺くんに…怒りを通り越して呆れてくる。


「………まぁ、獄寺くんにも色々事情があるって、だからそんな盲目的になってるって、知ってるから強くも言えないけどね…」


―――でも。


「だからって、オレがそれにいつまでも甘んじ続けるなんて思わないこと…獄寺くん」

「はい?」


いつか崩してみせるから。


獄寺くんの価値感。

獄寺くんの普通。

獄寺くんの常識。


「覚悟してね?」


++++++++++

?はい。覚悟します。