獄寺くんの長い長い流行性感冒
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「ほら隼人起きろー。粥出来たぞ粥ー。喰うだろー?」
「ん…うん」
シャマルの声にかそれとも湯気を漂わすお粥にか獄寺くんは目蓋を擦りながらシャマルに応えた。
薄っすらと目を開けて…増えてる人間に目をぱちくりさせる。
「あれ…?なんで骸が…?」
「ああ、幻覚だ」
ナチュラルにすげぇこと言い出したよあの医者と殺し屋の顔を持つ男。
「なんだそうか…」
そしてナチュラルに受け入れたよあの子。ああもう可愛いなぁ。
「幻覚…」
骸は存在そのものを否定されたことが哀しいのか部屋の隅でのの字を書き始めた。
正直うざったいことこの上ない。
「…骸」
「綱吉くん…?」
オレは務めてやさしい笑顔で、言ってやった。
「うざいから出て行け」
「どうしてあなた方人間と言うものはそう微笑みながら傷口に塩を練りこむような真似が出来ますかね!!!」
骸は涙を流しながら乙女走りで去って行った。
獄寺くんはそんな骸も視界に入ってなかったようで、シャマルの手からもくもくとお粥を食べている。
か…可愛いな!!
「こらボンゴレ坊主。ムービー撮んな」
えー!
「…っと、隼人もう良いのか?」
「んー…」
獄寺くんはお粥を半分ほど食べた所でもう良いと言わんばかりにシャマルの手を押し退けた。
「ま、病気ん時のお前にしちゃ良く喰ったほうだな」
ぽんぽんとシャマルは獄寺くんの頭を撫でる…獄寺くんは気持ち良さそうだ。
「なんか欲しいのあったら言えよ?出来る限りで用意してやる」
「ん…シャマル、」
「ん?」
「ありがと…な」
そう、言うと獄寺くんは。
「なーーーーー!!!」
その、シャマルの頬に…ちゅっと、唇を触れさせた。
いわゆるキスという奴だった。
「ちょ、獄寺くん退化しすぎ!どうしたの!?シャマルに一服盛られたの!?」
「それはお前失礼すぎだろう」
「うるせぇ黙れ!!!獄寺くん大丈夫!?顔が赤いけどそれは本当に風邪での熱!?」
オレはシャマルを押し退け獄寺くんの隣に座り込む。
獄寺くんは惚けたような顔で…上目遣いでオレを見上げてきて。
「…心配、してくれたんですか…?ありがとうございます」
と言って、オレに顔を近付けて…
オレの…ほっぺたに、何か、何か柔らかいものが一瞬だけ触れて離れた。
………。
「オレ、死んでも良い…!」
「そうか、まぁ止めはしないが」
いや、それは言葉のあやで。
「それはそれとして…お父義さん―――娘さんを、是非僕に…!」
「駄目だ」
即行で断られた…!
ていうかお父義さんにも娘さんにも突っ込みはなしですか…!
「まぁオレはこう見えて隼人の保護者張らせてもらってるし、隼人は娘みたいなもんだからな…」
「…そうだよね!獄寺くん可愛いもんね!」
ごめん!オレ、突っ込み放棄するわ!!
「ばっかお前…隼人は可愛いだけじゃ言い表せねぇんだよ!隼人の魅力はそれだけに留まらなくてな…!」
シャマルはどこからともなく沢山の写真を取り出した。
中に見えるのはそれこそ幼少時代から今の獄寺くんまで…
本当はこいつ保護者じゃなくて妄想癖のあるストーカーじゃねぇ?とも思ったけど写真の獄寺くんの可愛さに何も言えなくなった。
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