彼の隣に立つ方法
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そういえば昔、いつだったか獄寺がオレを起こしに来たことがあった。

いつもならば誰かが部屋に入る前に起きるのだが、そのときは運が良かったのか悪かったのか、仕事疲れで珍しく深く眠っていて。

カーテンを開く音で気が付き、朝日の眩しさを目蓋越しに感じて目が覚めた。

思えば、誰かに起こされるなど初めての経験だったかも知れない。

だからだろう。オレがあのときの獄寺の顔も、声も、台詞ですら今でもよく覚えているのは。


「おはようございますリボーンさん。今日もいい天気ですよ」


…けれども今、あいつはいない。

あいつはもう、オレを起こしに来ることなどない。


自分から起きてくることなどない。

意識を取り戻すこともない。


あの声を聞くことも。

あの笑顔を見ることも。


もうないんだ。

だから―――


「おはようございますリボーンさん。今日もいい天気ですよ」


今目の前にいるこいつは、あいつでは決して有り得ない。

たとえこいつが、獄寺隼人以外の何者にも見えなくても。

オレは目の前にいるこいつを、決して認めるわけにはいかない。


…たとえ、こいつ自身に何の罪がなかろうとも。