彼の隣に立つ方法
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一歩離れてあいつが着いてくる。寂しそうにあいつが俯いている気配がする。
…なんだ?あいつ、何かあったのか?
……そういえば…今まであいつとこんなにも長く離れたことはなかったな。それでか?
思えば足を負傷してから、オレはほとんどボンゴレにいた。外出するときも今回を除いてあいつは着いてきた。
獄寺は…オレと長く離れてもあんなに辛そうにはしてなかったけどな。
……………。
ああ、そうか。オレが相手をしてないからか。
この反応は初めて見るものだった。所詮こいつは周りのデータを元に獄寺を"演じて"いるだけなのだから初めての出来事に対応出来るはずがない。
どこかぼろが出るんじゃないかと思ったが、そんなことはなかった。そこが腹立たしくて…苛立った。
この日はずっと、あいつを無視していた。いつもよりも、ずっと。
少しでもあいつにかまけると…あいつを見ると。何故だか本当に獄寺だと錯覚してしまいそうになったから。
…認めたくはないが…やはりどこかオレも、あいつを獄寺の代わりにしていた部位があったということか……?
……………。
それから無感情に仕事をしていけば、気付けばもう夕刻で。
そろそろ部屋に戻るかと歩き出せば、後ろで音が。
見ればあいつが床にへたり込んでいて。
…転んだのか?
「…何をやってるんだ、お前は…」
「あ…あ…す、すいません、リボーンさん…」
…もしかして調子が悪いのか?普段のこいつならば転ぶことなどありえない。実際、初めて見た。
杖を突いて、あいつの前に立つ。目の前のこいつはオレを見上げている。その顔にはどこか疲労の色が浮かんでて。
………。
「…ほら」
「え…?」
オレは手を差し出していた。こいつは不思議なものを見るようにきょとん、としている。
「…どうした?」
「え…!?あ、いえ…」
恐る恐る、といった感じにこいつはオレの手を掴んで立ち上がった。すぐに離れたものの、その足取りはどこか覚束ない。
「…お前な……疲れているのならオレなんかにかまけてないで休んでもいいんだぞ?」
むしろそっちの方がオレも気が楽だ。つか機械が疲れるってのもおかしな話だけどな。
…まぁ、なんにしろ休むだなんて事こいつに出来るわけがないんだが。
「………」
目の前のこいつは黙っている。俯いて、何かを考えている。
…なんだ…?
「…どうして……」
「…ん?」
「どうして…リボーンさん…そんなにオレに、優しいんですか?」
………。
…優しい、か。
確かに今までの…特に今日のオレの動向から比べたら優しいに分類される行動かも知れないな。
だが…言えるか。
床にへたりこでいるこいつを見たら、どうしても獄寺とリンクしてしまい……思わず手が伸びただなんて。
「…別に、普段通りだろ。それにお前にはいつも補助として世話になってるからな。これくらい当然だ」
「……………そう、ですか……」
…こいつは一体何が言いたいんだ?俯くこいつの考えがさっぱり分からない。
「リボーンさん…お願いです、教えて下さい」
「…?なんだ?」
こいつが何かを聞いてくるとは珍しいな。データの集合体であるこいつが今まで何か疑問を持つことなどなかったし。
…もしかしてオレがボンゴレから離れている間にツナたちに何かされたのか?ツナもこいつにやってほしいことがあるとか言ってたし。
……それなら朝から感じている違和感も納得がいくが…
「オレは……獄寺隼人、ですか…?」
「…?何を…」
「答えて…下さい」
………?
嫌に切羽詰ってるみたいだが…本当にオレがいない間に何があったんだ?
変な答えをすれば自害すらしそうな勢いだが……
「………そう、だな…」
こいつは獄寺隼人か。
そう聞かれれば…
「お前は……」
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