彼の隣に立つ方法
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以前までのオレなら、何を言ってるんだと一蹴しただろう。お前は違うと。あいつなわけがないと。

けれど…今日に限って、そうだと言い辛い。

それほどまでに、こいつは獄寺にそっくりで。


だけど、そんなわけがなくて。

それでも………こいつに罪はなくて。


そう、こいつの役目はここにはいない獄寺隼人に成り切ること。その為に作られた。

でもこいつは、本物に成り得るは決して出来ない。所詮は偽者なのだから。

だから全ての人間に自分は獄寺隼人なのだと認めてほしいのだろう。今オレの前で問い掛けているように。


見れば、あいつの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。本当に獄寺にそっくりな顔で。

…ああ、もう泣くな。そんな辛そうな顔をするな。


認めるから。


お前には何の罪もない。むしろ罪があるならオレの方。

お前はオレの罪。お前が何故作られたのかというと、オレが獄寺を守れなかったから。

お前を認めないということは、それはオレは自分の罪を認めないということ。

それならば……

オレは目の前のそいつを引き寄せて。初めて……頭を撫でてやった。


「え……」

「お前は…獄寺隼人だ」


目が見開かれる気配を感じた。びくり、とこいつ………獄寺の身体が震えた。

堪えきれなくなって涙が零れたのか、オレの服が濡れるのを感じる。


「そうですか……」


獄寺は自分から離れた。その手にはさっきまで持ってなかった、けれどオレの見慣れたものを持って。


「"こいつ"は、獄寺隼人ですか」


獄寺が持っているのはオレの銃だった。先程オレが引き寄せたときにでも見つけたのだろうか?


「あなたの動かぬ足を補助する"あいつ"が、獄寺隼人ですか」


獄寺は泣いていた。先程よりも辛そうに。先程よりも悲しそうに。



「"オレ"の居場所は…あなたの隣じゃなかったんですね」



獄寺はオレの銃を自身に宛がう。…嫌な汗がオレを伝う。

…いや、まさか……そんなことが…


獄寺は泣いていた。

獄寺隼人は泣いていた。


病室で変わらず眠り続けているはずの獄寺は泣いていた。


オレの恋人である獄寺は泣いていた。

オレに、偽者が本物であると断言されて泣いていた。



「さようならリボーンさん。…どうか、オレの偽者と末永く」



獄寺がそう言い終わると同時、

オレが止める間もなく、

獄寺は引き金を引いた。