彼の隣に立つ方法
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昔、戦場に出た際。オレは二つのものを失った。
一つは片足の自由。そしてもう一つは…
オレの、恋人だった男。
あいつは、今……
「…リボーンさん?もしかして寝惚けていらっしゃいます?」
と、眼前にひょっこりと現れたあいつそっくりな顔。
思わず殴って、視界から消した。
あいつは壁まで吹き飛び、強く身を打ちつけているが構わない。
あれはあの程度ではびくともしない。
「い…たい、ですリボーンさん…」
「悪いな。寝惚けてたんだ」
「ううう…」
痛そうに呻いているが、はてこいつに痛覚などあるのだろうか?
無機物であるこいつに。
目の端に入ったあいつの手には、今の衝撃でか傷が付いていた。
日に日に人間に、獄寺に近付いていくこいつは昔のように金属部が露になったりしない。
ツナたちが、それを良しとしなかったから。
あいつの破けた人工皮膚から赤いものが滴り落ちる。
オレは気にせず、立とうと傍に置いてある杖を取る。と、目敏くあいつはオレに近付いて寄り添う。
そう、オレがなんと口汚く罵ろうと嫌味を言おうと、こいつがオレから離れない理由はこれだ。
こいつの役目は、不自由になったオレの補佐。だからこいつはここにいる。
こいつは命令には逆らえない。オレも…ツナには負い目があるから強くも言えない。
…いや、違うか。
"負い目"だなんて都合の良い言い訳に過ぎない。
オレはただ言及されたくないだけだ。
獄寺を守れなかったことを。
オレの普段の業務にもこいつは着いてくる。当たり前だ。それが補佐というものだ。
便利だと、そう割り切ればいい。使い勝手のいい補助具があるのだと。
そう思おうとした。…けれど、そう容易に出来るわけもなかった。
リボーンさん。
あいつは、オレを呼ぶ。
リボーンさん。
あいつと同じ声で、オレを呼ぶ。
リボーンさん。
あいつとまったく同じ姿で、オレを…
「リボーンさ―――」
「うるさい!!」
苛立ちにか、杖を持ってない方の拳を振るわせた。
壁に拳が当る。ふと横を見れば、オレに声を掛けてきたあいつはオレの行動に驚いたのかやや怯んでいた。
「す…すいませんリボーンさん。…あの、10代目が、呼んでました…」
「…ツナが?―――すぐ行く」
オレは踵を返して歩き出す。一呼吸置いて、
「…ごめんなさい、リボーンさん」
…ああ、クソ。
しょげているときは「すいません」から「ごめんなさい」になる癖まで折り込み済みか。
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