彼の隣に立つ方法
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「あ。リボーンさん。お帰りなさい」


暫くして戻ると、あいつはオレが「着いてくるな」と言った場所から微動だにしてなかった。

こいつはいつもこうだ。恐らくオレが言えばいつまでも待つのではなかろうか?

…獄寺も微動だにしなさそうだしな……

……違う。こいつと獄寺を比べるな。こいつと獄寺は違う奴。こいつは…オレの補助だ。それ以外のなんでもない。


「…どうされました?リボーンさん」

「どうもしない」


素っ気無く言い放って、歩き出す。あいつはいつものように一歩遅れて着いてくる。

オレはあいつを認めない。

けれど、言ってしまえばこれはオレの都合で、あいつ自身には何の罪も汚点もない。

むしろ…罪や汚点があるとするならオレの方。

あの時。獄寺を守りきれたなら。あるいは獄寺に庇われるような事態に陥らなければ。

全ては…何も狂わなかった。オレにはそれが出来るだけの力があったはずなのに。


こいつは、オレの罪。


だがそれは…こいつを認めないということは……オレは自分の罪を認めてないということと、同義なのか…?

頭の中がぐるぐるする。色んなものが巡り回って、混ざり合ってくる。

そのせいか、段差に杖を引っ掛けてしまいバランスを崩す。動かない足から落ちていく。

だが、オレの身に衝撃はなかった。

転ぶ前にオレを支える奴がいたから。


「リボーンさん、大丈夫ですか?」

「ああ…」


オレを支えるのはオレの補助。こいつは自らに与えられた役目を果たしているだけ。それだけだ。

こいつは機械。こいつの行動は全てプログラム。こいつはどれだけあいつに似ていても、獄寺隼人には成り得ない。

分かっている。本物はあっち。本物はベッドで寝ている方。こいつは違う。こいつは偽者。…頭が回る。ぐるぐるぐる。


「…リボーンさん、今日は調子が悪いんですか?でしたら早めにお休みになられた方が…」


心配そうな獄寺。違うこいつは獄寺ではなくて。獄寺として作られたがこいつは決して獄寺ではありえなくて。でも獄寺にしか見えなくて。


「リボーンさん…?」


その声でオレを呼ぶな。

オレをその声で呼んでいいのは、オレが呼ばれたいのはお前じゃない。

何かしら言葉を放ってこいつを黙らせたいのに、何故かオレの口は開かない。

口どころか目蓋すらも重くなって、段々と閉じていく始末。

身体が、重い―――