彼の隣に立つ方法
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目覚めは最悪だった。

…オレは一体何をやってるんだ。いくら夢の中とはいえ獄寺を撃つなどと。

更に足元に撃って足止めするわけでもなく、顔面に標準を合わせたなどと。しかも躊躇すらせずそのまま撃ったなどと。

思わずベッドの上から項垂れる。頭を抱える。あの行動では本末転倒ではないか。


と、


「失礼します、リボーンさん」


聞こえてきた声に目をやれば、


「…リ、リボーンさん?如何なされましたか?そんな見るからに驚いて」


そこには、頭に包帯を幾重にも巻いている獄寺が。

夢でオレが撃ち抜いた通りの場所を怪我している獄寺が。


「お前……それ、どうした」

「え?それって………どれのお話です?」


首を傾げる獄寺。…いや、本当にこいつは獄寺か?偽者の方じゃないのか?


「…その、包帯だ」

「包帯って…別に普段と何も変わりませんよね?これの何が気になるんです?」


…ああ、まどろっこしい。


「いつ、怪我したんだと聞いてるんだ」

「………リボーンさん?大丈夫ですか?シャマルを呼びますか?」

「質問をしているのはオレだ。答えろ!」

「―――、その…以前抗争で、撃たれました。…貴方に」

「―――――」


…何が、どうなっている?

確かにオレは獄寺を撃ったさ。けれどそれは夢の中での話だ。現実は関係ない。それともオレはまだ夢を見ているのか?


「よく生きてたな」

「まぁ…正直死ぬかと思いましたけど昔から悪運だけは強い方で」


そういえばそうだった。昔からなんだかんだで生き残ってきたんだこいつは。怪我ばかり傷ばかりその身に負いながらも。

だけど、眠りっぱなしということはなかった。そりゃあ何日かはあったが何週間も何ヶ月もということはなかった。

じゃあ、今までのが夢なのか?獄寺は病室で眠り続けてなどいない?ましてや獄寺の偽者などもない?

そうなのか…?本当に?


「………………」

「リ…リボーンさん?」


黙り込むオレに心配そうに話し掛ける獄寺。

…しかし。はて。どうしてこいつはこうもオレに構う?こいつの言う通りならオレはこいつを撃ったんだぞ?

普通、嫌うだろう。避けるだろう。なのにこいつにはそんな素振りが見られない。


「…なぁ…一つ、聞いていいか?」

「は、はい…?」

「お前、オレをどう思っている?」

「え…?え…え、―――ええぇええぇぇえ!?」

「そう素っ頓狂な声を上げるな」

「すいません!と、言いますか、な、何をいきなり!?」

「オレが知りたい。猛烈に知りたい。今知りたい。答えろ」

「そ…そりゃ…お慕い申して…ますよ?こんなオレがリボーンさんの隣にいれてそれはもう嬉しくも恐れ多くでも誇らしく……」

「本当か…?」


と、聞くまでもなかった。こいつの嘘などすぐに分かる。


「本当ですよ?」

「そんな怪我をしてもか?」

「何言ってるんですか。この業界怪我が怖くてやっていけるほど甘くないです」

「その怪我を作ったのはオレだろうが」

「何言ってるんですか!」


と、獄寺は握り拳を作り、


「どこの誰とも知らないような奴に作られた傷ならまだしも、貴方に作られた傷ならばむしろ嬉しいです!!!」


そう力説した。

………。

ああ、そうか。すっかり忘れてた。


こいつ、馬鹿だった。