彼の隣に立つ方法
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「ああ、すまない。忘れてた」
「忘れないで下さい!!」
「そう言うな。今までずっとおかしな夢を見てたんだ」
「夢…ですか?」
「ああ。本当に変な夢だった。そのうちお前にも教えてやる」
「…?はぁ…ありがとうございます」
「それにしても……今日は暑いな」
朝っぱらだと言うのに既にもう汗だくだ。心なしか息も荒い。
「…そう…ですね。もう夏ですし……あとで冷たいものでも持ってきますよ。今は横になって安静にしていて下さい…リボーンさん」
「……そう、だな…」
獄寺に横にさせられ、毛布を被せられる。
目の前にはまるで隙だらけな獄寺。それに、悪戯心が湧き上がる。
すっと、獄寺のネクタイに手をやり。無造作に引っ張った。
「わ…!?」
驚く獄寺の顔がすぐ目の前に。何をされたのかまるで分かってない獄寺の顔が状況を把握するにつれ徐々に赤く赤くなっていく。
やがて手を離すと、獄寺はぐったりとしてベッドに突っ伏した。その顔はなるほど、タコ頭と呼ぶに相応しい。
「な…なにを、」
「隙だらけなお前が悪い」
「答えになってないうえに……酷いです」
「酷いものか」
はぁ、とこれ見よがしにため息を吐いてやる。
「恋人にキスして、一体何が悪い」
ぴたり。そんな擬音が似合うほど見事に獄寺は止まった。
そしてオレの頭を毛布の波が襲う。
「も、もう!寝てて下さい安静にしてて下さいリボーンさん!!どうしてそう貴方はオレに悪戯を仕掛けますかー!!!」
だって仕方ないだろう。
お前とこうして触れ合えるのは本当に久し振りなんだから。
なんて言っても、きっと誰にも通じないのだろうから。言わないが。
「…ああ、すまない。悪かった」
素直にそう詫びを入れたら入れたで、複雑そうな顔をする獄寺。
「…素直に謝るリボーンさんなんて、なんだかあまりリボーンさんらしくないです」
失礼な。
「はぁ……じゃあ、オレはもう行きますね。またあとで来ます」
背を向けて歩き出す。オレはその後姿に、
「―――獄寺」
と声を掛ける。
ぴたり。とまた獄寺が止まった。
「なんでしょう?」と振り向くこともなく、「今忙しいのであとにして下さい」と言葉を放つわけでもなく。ただ止まっている。
獄寺は振り向くこともせず、そう言って退室した。
室内にはオレ一人になり、けれど特にするべきこともなく。
「…寝るか」
呟いて、横になる。
………次に獄寺が来たら、冷房を入れてもらおう。
今日はなんだか―――異常なまでに、暑すぎる。
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