彼の隣に立つ方法
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そうしてオレが選んだ未来は、正しかったのか間違っているのか。

あのあとオレはあの人の部屋まで戻った。…あの人の両足を切断するために。

一度決めたら行動は早かった。切断、止血、後処理。

…輸血が満足に出来なかったから、早めに手を打たないといけないな……


けれど、そんなことよりも一番緊張したのはあの人との会話で。

そう、全てはあそこで決まった。いくら小細工をしようとも、あの人の体調と夢見が悪く騙されやすくなっていようとも。


オレがあの人を騙し切れなかったら、全ては無意味なことで。


オレは"獄寺隼人"として回答した。ああ、違う、違います。オレは獄寺隼人。オレが獄寺隼人。

オレが本物。オレこそが本物。オレ以外に獄寺隼人なんて存在しているわけがない。

そう。そうとも。だってその証拠にあの人は……


獄寺。


オレを、そう呼んでくれた。本当に久し振りに。

嬉しかった。だってあの日を境に今までずっとその名で呼ばれることなんてなかったから。

オレは獄寺隼人として認められた。他の誰でもない、あの人に。

それは喜ばしいこと。それは誇らしいこと。それこそオレは手放しで喜んでいいはず。

………だけれど。


オレは、獄寺隼人には出来ないことをやってのけた。


獄寺隼人が、リボーンさんを騙そうだなんて考えるはずはない。

だってリボーンさんは人の心が読めるから。


獄寺隼人が、リボーンさんの足を切り落とすなんて出来るはずがない。

仮にするとしても、もっと不手際だったはずだ。だって好きな人の足を取るだなんて。気が動転するに違いない。だけどオレはそれを"機械的"に処理して。

いいや、そもそも。そもそもだ。


獄寺隼人―――いや、人間が、頭を撃たれて無事なはずがない。


オレは人の心が読めるリボーンさんを騙し通した。嘘を付くときだけ"獄寺隼人が本当のことを話す仕草"をして。

オレはリボーンさんの足を取った。無表情に。無感情に。

オレは……オレは、獄寺隼人じゃ、ない。


オレは偽者だ。