彼の隣に立つ方法
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「聞いた話、古傷の場所すら一緒なんだってな」


獄寺隼人が偽者の位置で独り言のように呟いている。オレは頷く。


「そんで怪我すりゃ血も出るし汗だって掻く。周りに溶け込める程度には記憶だってある」


獄寺隼人が拳銃をいじりながら呟いている。オレは頷く。


「ああ、なら、じゃあ、」


獄寺隼人は自嘲気味に笑って言う。


「オレ、必要ないな」


あっさりとそう言い放つものだから、ああ、そうなんだと納得しかけてしまう。


「って、そんなわけ…」


「あるだろ。オレが普段から無意識にしている癖や仕草。思考パターンに銃の腕。火薬の知識。信じたくはないが10代目への忠誠心。そんなあらゆるものがオレとまったく同じ奴がいるってんなら」

獄寺隼人は真っ直ぐにオレを見る。


「オレは、必要ない」


がっかりだ。と獄寺隼人は呟いている。

24年間、必死に生きてきたつもりだったのに。なのにオレって奴は二年と四ヶ月で追いつかれる程度だったなんて。


「オレは偽者だ」


オレは否定する。本物と偽者の境目をはっきりと付ける。この世に不要なのはオレの方だと。


「オレが認めてやるよ」


だというのに、獄寺隼人は信じられないことを言う。


「お前は、いや、お前"が"獄寺隼人だ。よかったな。本物に認められる機会なんてそうそうないぜ」


だから、と獄寺隼人は続ける。続けながら、拳銃をオレに持たせる。



「だから、オレが偽者になる」



重い拳銃がオレの手の平に乗る。人を壊す道具。ここにいる偽者を殺すための道具を。


「お前、オレが起きたって聞いて。廃棄されるって決まって。安心しただろ?」


銃を手放したい。銃を捨てたい。けれど獄寺隼人がオレの手を押さえ込んで離さない。


「リボーンさんのあとを追えるって。喜んだんだろ?」


獄寺隼人の力が強くなる。ぎりぎりとオレの手と拳銃が押さえつけられて痛みを感じる。


「ここにオレを置いて、自分はリボーンさんを追おうとしたわけだ」


獄寺隼人の唇だけが動く。読まずともなんて言ったかなんて分かる。ゆるさない、だ。


「本物の称号ぐらい、オレがやるから」


獄寺隼人がオレに銃を向かわせる。本物のもとへと。



「リボーンさんのあとを追うのは、オレに任せてくれ」



任せられるわけがない。


「冗談だろ?」


本気だということは分かっていた。が、そうでも言わないとやってられない。