彼の隣に立つ方法
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「いくらお前がオレを本物だって言い放っても、オレは偽者だ。オレが知ってる」

「なんの関係もねぇよ」

「偽者は本物に殺される。いくら偽者が本物だと言っても、最後にはばれて終わる」

「そうじゃない時もある。ドッペルゲンガーとかな」


ドイツの妖精がまさかのイタリア出張かよ。と思わずオレは毒付いた。ドッペルゲンガー。もうじき死ぬ人間の前に現れる、自分そっくりの化け物。


「…お前がリボーンさんの補佐、か…」

「ああ…」

「ずっとリボーンさんの傍にいたんだろうな。羨ましいぜ」


殺したいぐらい。絶対今そう思ったに違いない。


「そうしろよ」


言うが、獄寺隼人はオレの言うことを無視して、


「リボーンさんを看取ったのもお前なんだな」

「………そうだ」

「なんて言ってた?」


リボーンさんの最後の言葉。リボーンさんの最後の思い。…出来れば誰にも言わず、オレの胸にだけ秘めておきたかったが…

けれどこいつの前ではそれは不可能だ。オレに拒否権なんてあるわけがない。


「………"先に行く"」


獄寺隼人は少し驚いた顔をした。そして遠い目をして、微笑んだ。


「そうか」


獄寺隼人の指が、オレの指の上から引き金に力を掛ける。



「今行きます」



それは、少なくともオレに向けられた言葉ではなかった。

獄寺隼人は、もうオレなんて見てなかった。


獄寺隼人は、自殺した。

偽者として。本物の立ち位置をオレに押し付けて。

オレは獄寺隼人が死んで、めでたく。


本物に―――成ってしまった。