彼の隣に立つ方法
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周りはオレに気付かない。
オレが偽者であるということに、気付いていない。
いいや、そもそも彼らにとって本物という定義は、今まで寝ていたかそうじゃないかとか、誰と誰の間に生まれて誰にいつ忠誠を誓って…とか、そんなんじゃないんだ。
彼らにとって本物とは、今、目の前で歩いている方。
なんてシンプル。なんて単純。今まで必死に獄寺隼人を演じていた自分が馬鹿みたいだ。
だって仮にオレが獄寺隼人らしからぬ行為をしたとして、だからと言って誰もオレを「偽者!」なんて指差して責めたりしない。
調子が悪い、そんな時もある。それで終わりだ。
獄寺隼人が感じたであろう絶望を感じる。
ずっと眠り続けていて。
そしていざ起きたと思ったら、そこには自分がいて。自分そっくりの、自分とまったく同じ動きをする奴がいて。
周りのほとんどは、そいつが偽者だって気付いていない。今まで寝ていた自分は取り残された気がして。
そして、好きだった人すら、そいつを本物と思っていて。
しかもその人はそいつを本物だと思ったまま、死んでいた。
訂正はもう出来ない。取り返しももう付かない。
絶望だ。希望が絶たれた。もうどうしようもない。
だからこそあいつは死んだ。死んでも誰も困らないから。いや、唯一困るのはオレだが。
しかしそれこそあいつにとってはしてやったりだろう。オレを恨んだだろうから。憎んだだろうから。それこそ死ぬほど。
あいつは死んだ。リボーンさんも死んだ。オレは何故だか生きている。
リボーンさんには墓が立てられた。あいつには墓は与えられなかった。オレは死んだら墓は与えられるのだろうか?
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