彼の隣に立つ方法
27ページ/全28ページ


周りはオレに気付かない。

オレが偽者であるということに、気付いていない。

いいや、そもそも彼らにとって本物という定義は、今まで寝ていたかそうじゃないかとか、誰と誰の間に生まれて誰にいつ忠誠を誓って…とか、そんなんじゃないんだ。


彼らにとって本物とは、今、目の前で歩いている方。


なんてシンプル。なんて単純。今まで必死に獄寺隼人を演じていた自分が馬鹿みたいだ。

だって仮にオレが獄寺隼人らしからぬ行為をしたとして、だからと言って誰もオレを「偽者!」なんて指差して責めたりしない。

調子が悪い、そんな時もある。それで終わりだ。


獄寺隼人が感じたであろう絶望を感じる。


ずっと眠り続けていて。

そしていざ起きたと思ったら、そこには自分がいて。自分そっくりの、自分とまったく同じ動きをする奴がいて。


周りのほとんどは、そいつが偽者だって気付いていない。今まで寝ていた自分は取り残された気がして。

そして、好きだった人すら、そいつを本物と思っていて。

しかもその人はそいつを本物だと思ったまま、死んでいた。


訂正はもう出来ない。取り返しももう付かない。

絶望だ。希望が絶たれた。もうどうしようもない。


だからこそあいつは死んだ。死んでも誰も困らないから。いや、唯一困るのはオレだが。

しかしそれこそあいつにとってはしてやったりだろう。オレを恨んだだろうから。憎んだだろうから。それこそ死ぬほど。

あいつは死んだ。リボーンさんも死んだ。オレは何故だか生きている。

リボーンさんには墓が立てられた。あいつには墓は与えられなかった。オレは死んだら墓は与えられるのだろうか?