彼の隣に立つ方法
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―――そういえば昔、いつだったか獄寺がオレを起こしに来たことがあった。
いつもならば誰かが部屋に入る前に起きるのだが、そのときは運が良かったのか悪かったのか、仕事疲れで珍しく深く眠っていて。
カーテンを開く音で気が付き、朝日の眩しさを目蓋越しに感じて目が覚めた。
思えば、誰かに起こされるなど初めての経験だったかもしれない。
だからだろう。オレがあのときの獄寺の顔も、声も、台詞ですら今でもよく覚えているのは。
「おはようございますリボーンさん。今日も良い天気ですよ」
―――夢を、見ているのだと思った。
あの日の夢を、見ているのだと思った。
それほど目の前の光景はあの時と酷似していて。
…けれど、オレは知っている。
あいつが…獄寺がここに来れるわけがないのだと。
あいつは眠り続けているのだと。
目の前にいるこいつは…偽者の獄寺なんだと。
そうだと、分かっているはずなのに……
一瞬でも本物と見間違えたのは………見間違えてしまったのは、きっと…オレが寝起きで寝惚けていたからだと。
そうに違いないと、思った。
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