片想い
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「また来てくれたのか」


そう言って、病室に訪れたリボーンさんはオレに微笑みかけます。あたたかい笑みです。

もしもただ怪我をしただけだったなら、きっと一瞥して終わりだったでしょうに。


「そういえば、ツナに獄寺の訓練成績見せてもらったんだけどな」


10代目たちのリボーンさんの記憶復活作業はまだ続いているようです。成果は芳しくないようですが。


「好成績じゃないか。特に射撃部分が目を引く」


そりゃオレはあなたの教え子ですし。射撃はあなた直々にご指導頂きましたし。

そう出掛けた言葉を飲み込んで、オレは礼の言葉を言いました。ありがとうございます。


「お前もオレの生徒だったら、鼻高かったんだけどな」

「な―――――」


オレは思わず言葉を失いました。だけど何とか立て直します。


「なにを、言ってるんですか」

「ツナたちの言う通り、お前も10年前からの付き合いだったらよかったのにと言ってるんだ」


10代目たちの言う通り、オレも10年前からの付き合いだったんです。


というか、実はリボーンさん本当は忘れたふりをしているだけなんじゃないんですか?


実は今、内心笑いを堪えてるんじゃないんですか?

本当はオレのこと忘れてないんじゃないですか?



―――――本当にオレのこと、覚えてないんですか?



言葉の羅列が、喉から飛び出ようとリボーンさんに突撃しようと暴れてます。

だけど堪えます。耐えます。我慢します。そういえばリボーンさんはアホ牛は覚えてるんだよな…オレは牛以下なのだろうか。少し落ち込む。

とにかく言葉を落ち着かせて、別の言葉に変換して、放ちました。


「10年前のオレは本当ガキでしたからね。案外、リボーンさんも呆れ果てて相手にするのは後回しにしたかも知れません」


というか、実際されました。


「お前の10年前ぐらい想像が付く。その上でオレは言ってんだ」


オレ実際あなたと10年前からいましたけど、後回しにされてました。

そう思ったことが通じたわけではないだろうが、リボーンさんは更にこう言ってきました。


「ああ、だけどオレは本当に好きな奴には素直になれないからな。素っ気無く当ってたかも知れない」


―――――。

オレはリボーンさんが言ったことが理解出来なくて、思考が止まって、言葉を失って、身体が固まりました。


「…どうした?」


リボーンさんに怪訝顔でそう言われて、やっとオレの時が動き始めます。


「…あ、……あはは。いえ、いきなり…好きな奴には〜なんて言ってきましたので、びっくりして」


自分のことでもないのに、とわざわざ付け足したのにリボーンさんは更にオレを混乱させます。


「なに言ってんだ。今お前の話だろ?オレは、お前結構好きだけどな」


…いえ、待って下さい。待ちましょう。待つとき。待て。ふぅ…


「…冗談ですね?残念ですがオレは騙せませんよ」


リボーンさんは昔から人を驚かせるのが好きでした。きっとこれもその一環なのです。


「冗談?オレは結構本気だぞ?」


この人、やっぱり本当はオレを覚えているのでしょう。そしてオレをからかっているのでしょう。そうに決まってます。

きっと待っていれば「引っかかったな」とか「なにマジに受け止めてんだ?」とか言ってくるのです。さぁ早く言って下さい。

なのにリボーンさんはいつまで待っても言ってくれません。それに比例してオレの心音が高まっていくのは何故でしょう。


「…獄寺?」


黙り込んだオレを心配そうにリボーンさんが見つめてきました。オレは飛び跳ねるように椅子から立ち上がって、


1.「また明日来ますっ」

2.「何でもありませんっ」