片想い相手
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「10代目」

「ん?」

「前、オレが怪我して帰ってきたときがあったじゃないですか」

「怪我っていうか、重傷ね」

「あの時オレ、リボーンさんに会ったんですけど」

「え?いつ」

「オレが起きる前の日の、深夜です」

「リボーンを見たの?」

「見ました。声も掛けてもらいまいた」

「………ああ、」


10代目が納得した風に頷いた。何か知ってるみたいだ。


「…リボーンさんは、どうしてあんな時間にオレのところにいたんでしょう」

「獄寺くんが心配だったんだよ」

「まさか」


10代目の意見を否定するなんて恐れ多いことなのだけど、オレは思わず声に出していた。

だって、それは、流石にないでしょう。いくらオレが騙されやすくてもそれには引っかかりませんて。


「いや、リボーンはいつも獄寺くんを心配しているよ」

「そうですか…?」


オレは記憶を遡らせてみる。

リボーンさんには、正直罵倒されたりとか、怒られたりとか。そんな記憶しかない。


「リボーンは外見と同じく精神年齢子供だから。好きな子には冷たくしちゃうの。…本当仕方ないよね。実際は馬鹿みたいに年食ってるくせに」

「…好きな子って、10代目…」

「あ、ごめん口が滑った」

「………」


どうにもこんなときの10代目の言葉は飄々としていて、本気なのか冗談なのか判断に困る。

いや、間違いなく冗談なのだと思うのだけれど。


「冗談なのだと思うのなら、リボーンに聞いてみたら?」

「…そうですね」


オレは10代目からリボーンさんの番号を聞いて、電話を掛けた。

どうせ「馬鹿かお前は」とか何とか言われるのがオチだ。そうとも、それが現実。

あの日のあの夜も、きっとオレの願望が夢に出ただけなんだ。そうに決まってる。

夢を見てるままで終わらせておけばよかった。分かりきった現実を見なければよかった。


オレの夢の中だけに、都合のいいあの人がいてくれればよかった。


そんなことを思っていたら、誰かが出た。誰かなんて決まってる。リボーンさんだ。さぁオレの夢を壊しに行こう。


『………誰だ?』

「オレです、リボーンさん」

『獄寺?』

「10代目から聞いたんですけど、リボーンさんオレのこと好きなんですか?」


ブツッ


切れた。


…流石リボーンさん…


「10代目、切れましたけど」

「照れてるんだって」

「呆れただけだと思いますが……」


と、今度は10代目の携帯に電話が掛かってきた。席を外そうすると、手で制された。同席してもいいらしい。


「リボーンから電話が掛かってきた」

「リボーンさんから?」


仕事の電話かな、とそう思った。

10代目はニヤニヤと笑いながら通話ボタンを押した。


『―――ツナてめぇ!!!一体獄寺に何を吹き込みやがった!!!』


今まで聞いたことのない、リボーンさんの取り乱した声が大音量で聞こえた。

………リボーンさん?

10代目は相変わらずニヤニヤと笑っている。


「…いや、別に?話の流れでそういう会話になったんだよ」

『オレが自分で言うから黙ってろって言ってただろうが!!!』

「そう言ってもう何年だよ。リボーンに任せてたら軽く500年は掛かりそう。オレたちはそう長生き出来ないの。早くしないリボーンが悪い」

『だからって…お前なぁ!!』


リボーンさんと10代目の会話が聞こえる。

けど、それはあまりオレの耳に入ってこない。

今の、リボーンさんの言葉を、整理するのに頭がいっぱいで。

…今、リボーンさん…なんて言った?

オレが自分の都合のいい幻聴を聞いていないとするならば、今……