風邪引き
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獄寺くんは、今風邪を引いているらしい。
「―――…けふ、けふっ」
「獄寺くん、大丈夫?」
喉を酷く痛めているようで―――声を出そうとすると咳が止まらないらしくて。
「―――ん…っ、けふっけほ」
「あ、ごめん獄寺くん。無理しなくていいから」
「…ん、けふっ」
つまり、今獄寺くんは喋れない状態になる――のかな?
……。
「それにしても獄寺くんってさー…」
「?――‥―…けほっ」
「結構迷惑な存在だよね」
「!?っ…けほ、けほっ」
「だってさー、獄寺くん煙草吸うしダイナマイトや火炎瓶とか危険物持ってるし」
「じ…っげほっ、んっ」
「誰彼構わず敵意振りまくし他校の生徒としょっちゅう喧嘩するし先生には目を付けられてるし」
「ん、けふっ、じゅ…げほっげほっ」
「オレの事いくら言っても名前で呼んでくれないし未だ敬語だし気を遣うし」
「んぐ…げほっげふっ」
「―――命に代えても守ります、なんて言うし」
「…けほ?」
…これは聞こえなかったかな?凄く小さな声で言ったし。
「………」
オレが黙ったからか、獄寺くんも黙る。…ていうか、落ち込んでる?
オレの言葉の隠れたメッセージに獄寺くんは気付かないんだろうな。…変なところで鈍感だから。彼は。
オレは未だ項垂れてる獄寺くんの横顔を覗き見て。
「―――なんてね」
「…?」
「ごめん。冗談。…ちょっと意地悪したくなっただけだから、そんな泣きそうな顔しないで?」
「っ――げほげほげほっ」
「あははははっ 喉痛いんだから話したら駄目でしょー?」
そうやって笑いながら走って帰った。
…知ってる?煙草って凄く身体に悪いんだよ?それにダイナマイトに火炎瓶。いつか爆発でもしちゃったらどうするの?
それにそんなに目立って。獄寺くんの魅力が他の誰かに知られちゃったらどうしてくれるんだよ。オレ一人で守りきろって?…いやまぁ守るけどさ。
たまにオレの名を呼んだと思ったら苗字にさん付けだし。オレとしてはもっと対等な立場を希望してるのに。どうして理解してくれないかなぁ。
オレの文句に秘められたメッセージは、未だにキミに届かないでいる。
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届いてほしいような、まだ届いてほしくないような。
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