ツナ父健闘記
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「早く帰らないと…10代目が飛んでくる」
その時の事を思い出してでしょうか。獄寺くんの身体が少し震えました。
一体どんな形相をして飛んできたのか、考えるだけで恐ろしいですね。
「…へぇー。飛んで、ね」
「電話する必要がなくて助かるな」
「………?とにかくそういうことだからオレ、帰るな」
何やら不穏な空気を察してでしょうか。獄寺くんは後退りしながらそう言って、立ち退こうとしました。
「うっわー、わざわざ断りいれてやんの。かっわいー」
「最も、黙って去ろうとしても無駄だっただろうがな…獄寺隼人。悪いがオレたちといてもらう」
「!?」
去ろうとした獄寺くんはニット眼鏡に腕を捕まれました。そして何故か目付きが獣っぽい奴には手を腰にやられました。
「…犬。お前、何のつもりだ?」
「え?だってこんなに可愛い子、今腰に手をやらないでいつやるってのよ」
「…この野郎。オレが今どれほど一杯一杯でこの子の腕に手をやってると思ってるんだ」
ニット眼鏡は純情のようでした。
「ちょ…、このっ 離せ…!」
獄寺くんも流石にこうまでされては抵抗します。けれど男二人の力には勝てません。
このままどこかへ連れ去られそうでしたが、天は獄寺くんに味方したようです。
「ちょーっと待った!…オレの獄寺を一体どこへ連れて行くつもりだ?」
「…オレのってのが少し気にはなるけど…ま、その事の追求は後ででいいや。まずはそこの二匹を咬み殺さないといけないからね」
山本と雲雀でした。タイミングがよすぎることから恐らくストーキングしていたのでしょう。
「獄寺ー、オレがこいつらを格好良く倒したら一緒にデートしようぜー?」
「またこの馬鹿は世迷言を…隼人は僕とのデートで忙しくて、キミに付き合う暇なんてないの。いい加減理解して?」
「いや、オレはもう帰らないといけねぇんだけど…」
獄寺くんの意見は大体無視されます。無視すると獄寺くんは流れてくれるからです。
「…へー、おっもしれぇじゃん?"10代目"が来るまでオレらも暇だし…いっちょ相手してやるよ!」
「戦うのめんどい…犬、お前が二人を相手しろ。オレは獄寺隼人を連れて逃げる」
ニット眼鏡は何かデジャブを視たようです。雲雀と目を合わせません。
「この…っ やだって―――10代目!!」
獄寺くんがその名を呼んだときです。
「―――の、てめぇらぁ!オレの可愛い可愛い可愛い獄寺くんに何してくれてんだ―――!!」
ツナでした。同じことを三回も繰り返す辺り、ご乱心の模様です。
けれどご乱心だろうとなんだろうと獄寺くんにとってはそれは何よりも頼もしく格好良いお父さんの登場なのです。獄寺くんは涙目で喜びます。
「じゅ、10代目ー!!」
「獄寺くん、待たせてごめんね!すぐにそこの四人をぶっ飛ばすから!!」
どうやらツナの目には獄寺くんを奪って四つ巴が行われているように見えたようです。まぁ間違ってはいませんが。
「そりゃひでーぜツナー!オレ獄寺を助けようとしてたのにー!!」
「それに、キミの出番はないよ。…あの二匹は僕が咬み殺してあげるから」
二人は何とか誤解を解こうと、そして高感度を上げようとしますが無駄でした。ツナには盲目フィルターが掛かってるからです。
「やかましい!どうせその二人を倒した後で断れない獄寺くんに付け込んで街中を連れ回すつもりだったくせに!!」
「いやそれは…」
「まぁ…少しぐらいはね」
ツナの言葉はピンポイントで大正解だったようです。
「―――あれがボンゴレ10代目…か?」
「そのようだな」
「何ていうか………ただの馬鹿親父だな」
「いや、馬鹿親父じゃなくてただの親馬鹿だろ」
どっちにしろ馬鹿な親父だという認識になったみたいです。
そんな二人の言葉を聞いて、獄寺くんの顔色が変わりました。
「…ボンゴレ…?―――お前ら、目的は10代目か!!」
「まぁ、最初はそのつもりだった」
「でも任務そっちのけにしたい気持ちが今凄い高い。10代目の娘、凄い可愛い」
獄寺くんの魅力は留まることを知らないようでした。
しかし獄寺くんにはそんなこと関係ありません。なんて言ったって、これはお父さんの危機なのですから。
「おい、暴れるな」
「離せ…!10代目、逃げて下さい!!」
「―――っ獄寺くん!?」
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