強い想いで決断を
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そう言う彼の言葉を信じ、オレは彼の示した方角へと走る。

彼はといえば、やってきた追っ手相手にダイナマイトを爆発させて陽動しているようだった。

さすがは幼い頃よりマフィアを目指していただけのことはある。その慣れた行動に、オレは正直舌を巻いた。

彼のおかげで敵の大部分がオレから離れる。もちろん敵の中には陽動だと分かっている奴もいて。オレはそんな奴らを相手に銃を撃つ。

遠くから、近くから。引っ切りなしに爆発音が響いてくるが、それはむしろ安心出来た。

何故なら、それは愛しい彼が無事だという何よりの証だったから。

オレの元に銃弾が飛び込んでくる。建物に隠れて、銃を撃って。一人ひとり消してゆく。

……ボンゴレに楯突いたことよりも、オレと獄寺くんを引き離した方の怒りが強いっていうのは…ボス失格かなぁ。


走りながら、ダイナマイトに火を点けて。投げて。大きな爆発音を轟かせて。

―――まずいな。予想以上に数が多いぞこれ……約束の時間に間に合わないかもしれない。

逃げながら、空いた手で装着型の小型の電話を装備し、掛ける。10代目を除く、ここから一番近い場所にいるボンゴレメンバーに繋がるはずだ。

―――出たのは、雲雀だった。


『…何?交渉は上手く…って爆発音に銃声?抗戦中?』

「ああ、交渉は上手くいったんだがな、帰りに襲われてる。雲雀、今どこにいる?」


雲雀が答えたのは、幸いにもここから近い街だった。


「雲雀、今すぐこっちに来い。町外れに10代目がいるはずだ。10代目と合流しだい、その場から離脱してくれ」

『それは構わないけど…キミは?あの子の性格を考える限り、キミがいないと言う事聞かなさそうだけど』


それは――…と答えようとして敵の銃弾が頬を掠る。横に飛びながらまたオレはダイナマイトを投げる。


「それは…その時は、10代目を気絶させてでも離脱してくれ。10代目の無事が最優先だ」

『…まったく、キミは10年前から全然変わってないね。尊敬すらするよ。真似はしたくないけど』


強く壁に頭をぶつけた。痛い。抗戦と移動と会話の両立は難しい。


『……なに今の音。凄い痛そうなんだけど』

「…痛そう、じゃなくて痛い。そんなことよりも、返答は?」

『…分かったよ。今からキミたちのいる港の町外れまで行く。そして綱吉を見つけ次第殴って連れて帰る。これでいいんだね』

「おい、あんまり乱暴な真似は―――」


一気に民家を駆け上がって。屋上へと姿を現す。敵からすれば絶好の的。でも、それはこちらにしても同じこと。


『乱暴な真似しないと綱吉を連れて帰れないの。あの子キミ関連の話になると目の色変わるんだから』


オレを目掛けて撃ってくる奴らにダイナマイトの雨を振らせてやる。ついでに、オレが駆けてきた階段には火炎瓶を。どうせ馬鹿な奴らが押し寄せてきてるのだろうから。

オレはすぐ近くの民家に飛び移る。低い屋根に着地し、そのまま地面に飛び降りてまた駆けた。


「……分かった。とにかく、10代目を生きてボンゴレに連れて帰ってくれ」

『―――キミは?』

「―――――あ?」


正面に敵が回りこんできたから、思わず隠し持っていたナイフで喉元を裂いた。鮮やかな血が吹き出て、オレたちの間に境界線を作った。


『……キミは、帰ってくるの?』

「……………当たり前だろ。お前に借りを作っちまったし。返せるまで死ねやしねぇ」

『そ。それを聞いて安心した』


その言葉を最後に、雲雀は電話を切った。あいつなら上手くやってくれるだろう。こう見えても、結構あいつを信用している。


……………さて。


オレはオレで、大きな仕事をこなさなくてはいけない。

まずは目の前にいるこいつらを一蹴。ボンゴレに楯突いた奴らはどうなるか、他のファミリーに教えなくてはならない。

手持ちの武器を思う存分使って、奴らを屠っていく。一人も逃がさず。一人も残さず。

もちろん、大勢対一人なのだから、オレにだって攻撃も当たる。黒いスーツで分かりにくいが、身体はきっと血塗れだろう。畜生、痛い。

……けど、負けるわけにはいかない。引くわけにも。

オレは、帰らないといけないのだから。