強い想いで決断を
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約束より少し早い時間、オレは町外れに来ていた。
……爆発音は少し前から途絶えてる。それは彼が逃げ切ったことを意味しているのか、それとも――
―――と、背後に気配を感じて。思わず振り返った。
ガスッと、頭に強い衝撃を受けて。意識を持っていかれそうになるけど何とか堪える。オレを攻撃したのは、雲雀だった。
「…残念。昔なら、これで一発だったんだけど。強くなったね綱吉も」
雲雀は飄々とした口調で、けれど攻撃を行ったトンファーは収めようとはしなかった。
「…何のつもりだ雲雀。見ようによっては、これは反逆だぞ」
凄んでそう言うと雲雀は大袈裟に肩を竦めた。けれど雲雀が放った次の一言に、オレの目が見開かれる。
「怖いね。けど、それならキミの愛しい彼も反逆になるよ。殴ってでもキミをボンゴレに連れて帰れって言ったの、彼だもの」
「―――なっ、獄寺くんが!?」
「そ。けど、あの子がいないとキミは意地でも帰ろうとしないだろうからね。だから気絶させて連れて帰ろうと思ったんだけど」
雲雀の言葉もそこそこに。オレは来た道を引き返そうとする。けれどそれを遮る雲雀。邪魔。
「……念のために聞いておくけど。どこまで?」
「―――決まってるだろ。獄寺くんの所まで行くんだよ。…まったく、なにが町外れで逢いましょうだ。嘘ばっかり」
オレの返答が気に入らないのか、雲雀はそこをどこうとはしない。
「…キミは馬鹿?何の為に、あの子が嫌われ者になってまで僕に頼んだと思ってるの?全ては、キミの為じゃないか」
嫌味ったらしく雲雀が言う。けれど、そんなこと知ったことではない。
「はっ?オレの為?そんなこと関係ないよ。どうしてオレがボンゴレ10代目になったと思ってるの?全ては彼の、獄寺くんの傍にいるためだよ」
きっぱりとそう言うと、雲雀は少し面食らったようだった。雲雀のそんな顔を見たのは初めてで。少し珍しい。
「―――はぁまったく。まいったね。…それで?ボンゴレ10代目はこれから何するおつもりで?」
降参した雲雀に不適に笑ってやり、オレは応える。
「もちろん―――オレの可愛い右腕を助け出す。着いてこい、雲雀。オレの命令は絶対だ」
だらだらと、血が流れて。
ああもう、血が足りない。少しばかり流しすぎた。
オレは港倉庫の壁にもたれかかって。そのままずるりと座り込んでしまった。
立っとかないといけないのに。座り込んでいるといざっていうとき思うように動けないのに。
そうは思っていても。頭で分かっていても。身体は休息を求め、オレの言う事を聞いてはくれない。
――約束の時間が回った頃だろうか。10代目はあの場所に着ただろうか。雲雀は上手くやってくれただろうか。
10代目に、恨まれるだろうな…
少し悲しかったが、でもオレはそれだけのことをしたのだ。仕方がない。
…それに。悲しくとも、後悔の念はない。
全ては、10代目の無事が最優先なのだから。
―――けれど。
ぎりっと歯を食いしばり、目を開ける。
…オレは10代目との約束を破ったからといって、死ぬつもりは毛頭ない。
力を溜めて、痛む身体を無視して。立ち上がって。
オレは帰る。生きてボンゴレに帰る。
よろけそうになって。壁に手を付いて身体を支えて。血が滑ってまた倒れて。
……痛いけど。苦しいけど。
―――でも、それでも。生きてやる。生き抜いてやる。
やがてまた追っ手に見つかって。けれど、もう逃げるつもりはない。
さっきまでは約束の時間があったから、逃げることも止むなしだったがもうそれは関係ない。
ここまで来たら、逃げるよりも追っ手を全て倒して、そこから休んで追い掛ける方がまだ成算があるというものだ。
オレはキッと、追っ手を見据えて……
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