消えたあなた
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オレはそいつに一気に距離を詰めていた。
オレに向けられてる銃を掴んで、逆にそいつに向ける。そしてオレの手は銃身を滑り引き金へ。
「………っ」
引き金を引いたなら弾が飛び出るだろう。
なのにオレの手は動かない。
「…どうした」
そいつの口から言葉が。
「…早く、オレを殺せ、―――獄寺」
え…
思わずそいつの顔を見る。
…その目には、光が。
リボーンさん?
リボーンさんが、そこにいた。
消えたはずのリボーンさんが、オレのすぐ目の前にいてくれた。
なのにどうしてオレはリボーンさんに銃を向けているのだろう。
どうしてリボーンさんが自分を撃つよう指示してくるのだろう。
オレが撃とうとしたのはリボーンさんではなく、リボーンさんによく似た何かだったのに。
なのにオレの手はリボーンさんへと銃を向けていて。
そこからオレは固まったまま動けない。
リボーンさんの望む通りに撃つことも、オレが願う通りに手を離すことも出来やしない。
「獄寺」
リボーンさんが、オレを呼ぶ。
「ここでオレを撃たないと、オレは今度こそ誰かを殺すだろう」
その言葉に思わず10代目が撃たれそうになったことを思い出す。
「オレはそれをよしとしない」
オレだってよしとしません。
「だから」
だから。
「オレを撃て。獄寺」
あなたを撃たないといけません。…リボーンさん。
頭では分かってる。理解している。そのつもりだ。
けれど。
………オレの手は、動かなかった。
それがきっと答え。
間違っているとしても、オレの出した答え。
「…出来ません、オレには…」
出した声は震えていた。
腕はまるで作り物になったかのように動かない。
「…そうか」
リボーンさんの声は単調だった。
「そうだな、…すまない、お前に押し付けようとした」
リボーンさんに謝られるだなんて、初めての経験だった。
しかもその理由が、自分を殺すよう頼んで、それを断ったからだなんて。
「お前はこのまま、固定してくれてればいい」
固定?何を…と思うと同時、気付く。
オレの手の中…リボーンさんの指が引き金を引こうと力を込めていってることに。
その銃口の先には…リボーンさんがいるのに。
「リボーンさ…止めて下さい…!!」
オレがそう頼んでも。願っても。リボーンさんは止まらない。
リボーンさんが止めてくれないのならオレが止めないといけないのに。
なのにオレの腕は、オレの意思に反して動かない。
オレの手で包まれたリボーンさんの手の動きがリアルに分かる。
それは自らが死のうとする動き。
それを止められない恐怖といったら、ない。
「リボーンさん!!」
「獄寺」
こんな状況だというのに。あなたはいつものように不敵に笑ってみせて。
「―――じゃあな」
飛び出す銃弾。
鳴り響く銃声。
目の前で飛び散る、赤いもの。
その赤いものが、オレの手に、腕に、身体に。…顔に降り注ぐ。
視界が歪み。世界が赤い。
音が、消える。
視界は黒く。世界は遠く。
…今となっては、よく覚えてないけれど。
多分、オレはこのとき。
泣いていた。
どうやらオレは気を失っていたらしく、目を開くと世界は明るかった。
…あの人の姿はない。身体と道端に付着したはずの赤い液体も、あの人の為に来たコロネロとラル・ミルチも姿を消していた。
のろのろと自室へと戻る。
するとそこには。
何故か、二切れのチーズケーキがテーブルの上に置かれていた。
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どこまでが夢で、どこからが現実ですか?
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