消えたお前
6ページ/全6ページ
海へと続く道のりを二人で歩く。
天気は快晴。あの日のように暑い日だった。
あいつは何故自分が海に誘われたのか分からないだろう。
何も知らないあいつと二人、海まで歩いた。
眩しい日差し。汗が身体を纏う。
オレはさっさと目的地に着こうと、足早に歩いていた。その後ろをあいつが歩く。
海までもう少し。というところで後ろから声がした。あいつの声。オレを呼ぶ声。
「リボーンさん」
場所まで同じだった。あの日、獄寺が倒れたところ。オレは思わず振り返った。
あいつは倒れなかった。丁度獄寺が倒れた場所で立ち止まっている。あいつは笑っている。
「今日は、いい天気ですね」
「………ああ、そうだな」
頷くオレに、あいつは歩き出す。あの日の獄寺が超えられなかった一線を、あっという間に超えてみせる。
あいつがオレの隣に立つ。
「オレ、リボーンさんといると、落ち着きます」
「…そうか」
「以前のオレも、そうだったんですか?」
「知るか」
そんなこと、獄寺は一言たりとも言わなかった。オレも気にしたりはしなかった。
あいつはオレを見上げている。言葉を出すべきかどうか迷っている顔だ。
「…別に、オレはお前に獄寺を演じろとは言わない。好きにしていい」
「………ありがとうございます」
消え入りそうな声だった。
獄寺であることを命じられ、獄寺として振舞うことを宿命付けられ、獄寺よりも獄寺であることを願われた獄寺でない誰か。
それがこいつだった。
あいつは俯かせていた顔を上げ、歩き出す。
波の音が聞こえる。
海までの距離が、近い―――――
++++++++++
あの日のお前は、一体何を思ってオレを海まで誘ったのか……
結局それは、永遠に分からずじまいだな。
前
戻