消えたお前
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海へと続く道のりを二人で歩く。

天気は快晴。あの日のように暑い日だった。

あいつは何故自分が海に誘われたのか分からないだろう。

何も知らないあいつと二人、海まで歩いた。


眩しい日差し。汗が身体を纏う。

オレはさっさと目的地に着こうと、足早に歩いていた。その後ろをあいつが歩く。

海までもう少し。というところで後ろから声がした。あいつの声。オレを呼ぶ声。


「リボーンさん」


場所まで同じだった。あの日、獄寺が倒れたところ。オレは思わず振り返った。

あいつは倒れなかった。丁度獄寺が倒れた場所で立ち止まっている。あいつは笑っている。


「今日は、いい天気ですね」

「………ああ、そうだな」


頷くオレに、あいつは歩き出す。あの日の獄寺が超えられなかった一線を、あっという間に超えてみせる。

あいつがオレの隣に立つ。


「オレ、リボーンさんといると、落ち着きます」

「…そうか」

「以前のオレも、そうだったんですか?」

「知るか」


そんなこと、獄寺は一言たりとも言わなかった。オレも気にしたりはしなかった。

あいつはオレを見上げている。言葉を出すべきかどうか迷っている顔だ。


「…別に、オレはお前に獄寺を演じろとは言わない。好きにしていい」

「………ありがとうございます」


消え入りそうな声だった。

獄寺であることを命じられ、獄寺として振舞うことを宿命付けられ、獄寺よりも獄寺であることを願われた獄寺でない誰か。


それがこいつだった。


あいつは俯かせていた顔を上げ、歩き出す。

波の音が聞こえる。

海までの距離が、近い―――――


++++++++++

あの日のお前は、一体何を思ってオレを海まで誘ったのか……

結局それは、永遠に分からずじまいだな。