消えた世界
1ページ/全2ページ
夢を見ている。これは夢なんだと分かる。
それは遥か昔に、本当にあっていたこと。…過ごしていた日常のこと。
たいせつな人がいて。頼りになる奴がいて。
苦手な人がいて。面白い奴がいて。
昔からの知り合いがいて。変な奴がいて―――
そして…だいすきな人がいて。
せかいはまっしろ。てんじょうも、ゆかも、かべも、しーつもぜんぶまっしろ。
せかいはおおきい。おおきなへや。おおきなべっど。そして、それだけのせかい。
おれはこのせかいからでない。…でれない?どちらだろう。わからない。
いつもあたたかなせかい。なにもないせかい。いろのないせかい。おとのないせかい。
おれはこのせかいにずっといる。いつからかなんてしらないけど。でもずっとだ。
そのせかいに、いつもなんにんかのにんげんがきて。それでせかいにひがともる。いろがつく。おとがでる。
そのひいちばんにきたのは。ちいさなまあるい、あかんぼう。
「なんか…いつ来ても信じられないね。あのベルと互角に渡り合ったあの子が…この子なんてね」
あかんぼうがなにかいってるけど。おれにはなんにもわからない。
それよりもとおれはこいこいとてをふって。あかんぼうをひきよせて。だきしめる。
「…僕はリボーンじゃないよ…?」
あかんぼうがなにかいってるけど。おれにはなんにもわからない。
ただ、ゆめをみた。どんなゆめかはわすれたけれど、でもきっとなつかしいゆめ。
とてもだいすきなひとのゆめ。ちいさなからだとおおきなたいど。
おれはそのひとがすきで。ぎゅってするのがだいすきで。
このひとがそのひと?わからない、わからない。
おもいだしたくて。おれはさらにぎゅってあかんぼうをだきしめる。ぎゅって。すりすりって。
「…ま。いいけどね」
あかんぼうがなにかいってるけど。おれにはなんにもわからない。
あかんぼうはしばらくずっと。…しごとだっていうまで。おれにだきしめられていた。
つぎにきたのは。おおきくてたくましいひと。
「はぁい隼人。会いたかったわー」
たくましいひとがなにかいってるけど。おれにはなんにもわからない。
たくましいひとはあうたびにおれにだきつく。そこからかおるはあせのにおい。
…しってるきがする。ゆめのなかであうひとににているきがする。
おおきなからだで。いつもわらってて。けんかばかりしていて。でもそれがたのしくて。
でも。おもいだせない。
「隼人ってお人形さんみたいで本当可愛いわねー。あ、男の子に可愛いは嬉しくないかしら?」
たくましいひとがなにかいってるけど。おれにはなんにもわからない。
「…本当。良いわぁ貴方。…だって」
いきなりほおをぶたれる。どこかがきれてちがしたたった。しろいせかいにはえるあか。
「ほら。こんなことされてもなんの感情も示さない。可愛い…食べちゃいたいくらい」
ああでもそれはだめだったわ、とかなんとかいいながらたくましいひとはへやをでていった。
おれはつぎのひとがくるまで。ずっとそのままだった。
次
戻